「人道研究ジャーナル」創刊号

「人道研究ジャーナル」創刊号 page 104/216

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Journal of Humanitarian Studies Vol. 1, 2012露国のマリー・フェオドロヴナ皇太后の両陛下に於かせられては、各国赤十字の連合に対して特別基金を賜わって居ると申上げましたら誠に結構のことであると仰せられまし....

Journal of Humanitarian Studies Vol. 1, 2012露国のマリー・フェオドロヴナ皇太后の両陛下に於かせられては、各国赤十字の連合に対して特別基金を賜わって居ると申上げましたら誠に結構のことであると仰せられました。これが後に即ち45年(明治45年)に米国華盛頓(ワシントン)で総会の開かれた時、平時救護事業の御奨励として拾万円を御下賜になった動機となったのではないかと私は考えるのであります。」と回顧している19)。社長侯爵松方正義が宮内大臣伯爵渡邊千秋あてに提出した趣意書の後段には、赤十字事業は戦時の救護を目的としたものであるが、1)平時における活動を奨励することによって社会の道徳を進め、国際間の平和を助長することになること。2)公共の変災に対して救護を施行することは、赤十字の存在とその功益をひろく人民に知らしめ、発達の基礎を固めることができること。3)平時赤十字事業を盛大にすることは、戦時の救護事業活動の素地を形成することに繋がること。と、これまで赤十字国際会議において提議され決議された要旨が記載され、更に、今回アメリカで開催される会議の討議の大半が平時活動に費やされる予定であることが加えられている20)。なお、請願した趣意書には、皇后宮大夫香川敬三に説明した結核の予防撲滅に関しては記載されていない。2)ドイツ国皇后及びロシア国皇太后の前例社長侯爵松方正義が宮内大臣伯爵渡邊千秋あてに提出した趣意書の前段には、皇室が直接国際赤十字に恩眷を賜わっている前例を紹介している。一つは1887年(明治20年)にドイツで開催された第4回赤十字国際会議に際して、ドイツ国アウグスタ皇后が6千マルクと肖像付金牌3個及び同銀牌9個を依託し、将来の赤十字事業に有益な開発等に使用され、後にアウグスタ皇后のご偉功を記念するため恩賜金を基礎として「アウグスタ基金」が創設されていること。一つは1902年(明治35年)にロシアで開催された第7回赤十字国際会議に際して、ロシア国マリーフェオドロヴナ皇太后が戦場における軍隊傷病者に迅速かつ有効の救助を与える方法を改良又は発見を奨励するために10万ルーブルを国際赤十字に下賜され、「マリーフェオドロヴナ基金」が創設されていることである21)。趣意書には、「仰ぎ希くは今回の集会を機とし、我皇室より国際赤十字の為、特種の恩眷を垂れさせられ之に依て更に斯業改善の新路を索求せしめ給わば、宏恩世界を覆被し一層我国光の赫々たるを胆仰するに至るべし。」22)とし、重ねて「皇室若し此の状態を下鑑し給い、之が奨励基金を設置せしめ給うが如きことを得ば、是れ最も時宜を得るものにして、依て以て平時赤十字事業の進歩に資し、人類の不幸を救済さるるに於て盛徳窮り罔るべし。」と結んでいる23)。本社補助金の辞退日本赤十字社は、博愛社から社名変更後、1887年(明治20年)5月25日に天皇皇后両陛下から本社補助金として年々5千円を下賜され、1899年(明治32年)3月15日から年々5千円を増賜されて、皇室から年々1万円が下賜されてきた24)。25創立25年を迎えた日本赤十字社は、初代社長伯爵佐野常民の資金蓄積方案)の遺図を受け継いで社業整理の方針を決め26)、1903年(明治36年)から1912年(明治45年)までの10年間に根基資金1500万円を蓄積することとし27)、その目標が達成されたことから28)、皇室から年々下賜されてきた本社補助金を拝辞することにした29)。102人道研究ジャーナルVol. 1, 2012