「人道研究ジャーナル」創刊号

「人道研究ジャーナル」創刊号 page 108/216

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Journal of Humanitarian Studies Vol. 1, 2012ヒューマニティとは何か~東西思想に見る人道思想の系譜と共感の精神~What is Humanity?~ A genealogy of the terminological notion of humanity andthe sentiment o....

Journal of Humanitarian Studies Vol. 1, 2012ヒューマニティとは何か~東西思想に見る人道思想の系譜と共感の精神~What is Humanity?~ A genealogy of the terminological notion of humanity andthe sentiment of sympathy in the East-West thoughts~はじめに(1)井上忠男人道(ヒューマニティ)とは何か―――人道危機や人道支援、人道的介入といった言葉が頻繁に使われる現代では、「人道」の語はいささかインフレ状態にある。しかし、人道の本質は何かと問われると、その概念は極めて曖昧で明確な定義すら存在しない。本稿では、人道研究をテーマに掲げる日本赤十字国際人道研究センターの機関誌創刊にあたり、現代世界において水戸黄門の印籠のように抗い難い道義的価値とみなされる人道主義(ヒューマニタリアニズム)の起源と概念を、この語の語源となったヒューマニティの本質から解き明かしつつ考えてみたい。併せて、古今東西の思想において人間の本性としての人道的感性がいかに理解されてきたかを、特に「同情と共感の精神」をキーワードに考えてみる。Ⅰ.ヒューマニティの起源と概念人道を意味するヒューマニティ(humanity)は、今日、人道機関の基本的理念として広く共有されているが、この語は日常的にはヒューマニズム(humanism)という言葉で表現されることが多い。しかし、ヒューマニズムとしての人道主義の概念は、実に曖昧かつ多義的である。例えば、ある百科事典1は、ヒューマニズムの諸形態を次の5つに分類している。1)人文主義としてのヒューマニズム14世紀から16世紀のイタリア・ルネサンス期の古代ギリシャ・ローマの古典文学・教養の復興運動。(代表的人物としてペトラルカ、エラスムス、ルターなどが挙げられる。)2)市民的ヒューマニズム17世紀から18世紀の啓蒙主義の時代的背景の中でフランス、イギリスで宗教的権威からの人間性解放を主張し、自由、平等、友愛を基調とするもの。(ヒューム、ルソー、ベンサム、コントなど。)3)新ヒューマニズム18世紀から19世紀のドイツの古典を重視し、人間性の調和的発展と自己救済力を説くドイツ人文主義。(カント、シラー、ゲーテなど)4)社会主義的ヒューマニズム19世紀の資本主義社会の台頭の中で疎外された人間性を回復するもの。(マルクス、エン(1)日本赤十字秋田看護大学106人道研究ジャーナルVol. 1, 2012