「人道研究ジャーナル」創刊号

「人道研究ジャーナル」創刊号 page 11/216

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Journal of Humanitarian Studies Vol. 1, 2012国際人道研究センター設立の背景と期待(1)五十嵐清昨年(2011年)4月に日本赤十字社の協力と参加のもとに、現在、看護大学・大学院6校、短期大学1校のグループ力を....

Journal of Humanitarian Studies Vol. 1, 2012国際人道研究センター設立の背景と期待(1)五十嵐清昨年(2011年)4月に日本赤十字社の協力と参加のもとに、現在、看護大学・大学院6校、短期大学1校のグループ力を活かした特色ある大学運営を行っている赤十字学園に「日本赤十字国際人道研究センター」が設立されました。現在、この研究センターは学園本部の直轄施設として、日本赤十字看護大学(東京広尾)に置かれています。今後、日本赤十字社全体の学術拠点としてその役割は大いに期待されているところであります。研究センターは日本赤十字社の研究ニーズを踏まえて堅実な発展を期しながら調査研究などの業務を漸次拡大していくこととしています。この研究センターを設置する背景を説明するには、少しばかり日本赤十字社の歴史に触れる必要があります。日本赤十字社は1877年(明治10年)に設置されて以来130数年にわたり、設立の契機となった西南の役(明治10年)をはじめ、日清、日露、第一次世界大戦、第二次世界大戦と数多くの戦争や紛争で救護活動を実施するとともに、1888年(明治21年)福島県磐梯山の噴火による周辺の町や村を襲った自然災害での被災者救護を展開し、世界でも初めて本格的な自然災害における救護活動に逸早く着手しました。近年に入り、終戦間際の広島・長崎での原爆被爆者への医療救護、戦後の中国・朝鮮半島等からの在外邦人帰国問題、その後の朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)への在日朝鮮人の帰還事業、そして戦後処理で未解決問題となっていた在サハリン韓国人問題、台湾人元日本兵への処遇問題等があり、一方で、日本経済の高度成長に伴い、海外への国際協力が1960年代に入って活発化しました。国際救援への医師、看護師などの医療関係者の派遣は、1960年代のアフリカのコンゴ・ビアフラ難民への支援で始まり、1980年代のエチオピア、スーダンなどでのアフリカ飢餓問題、1990年代半ばのルワンダ難民救援を経て、2000年代に入りアフガニスタン、トルコ、インド、そして中国四川省の大地震とその活躍の場は飛躍的に拡大しました。この間、日本赤十字社は創立100周年を迎えて、1977年(昭和52年)竣工の旧本社ビルを新築建替しましたが、建て替え期間中の引越し騒ぎのなかで多くの保存資料が整理され、中には散逸・廃棄されたものも少なくありません。他方、赤十字国際委員会、国際赤十字・赤新月社連盟、各国赤十字社では資料の保管・整理・開示に当たる担当者が配置されています。新設された研究センターでは、こうした国際赤十字のネットワークを活かして失われた資料の補足を行い必要な資料の調査・収集および研究が期待されています。日本赤十字社は130有余年の永きにわたり戦前戦後を通じて「日本の人道の歴史」を作ってきたと言っても過言ではありません。赤十字は事業を行う組織ですし、現在もその形は変わりません。しかし、事業・実績の研究や評価、さらに今後の課題等について、自らまとめたものは決して多くはありません。目の前の仕事に追われてなかなか自分を振り返る時間的な余裕が無かったのは容易に想像できます。(1)学校法人日本赤十字学園常務理事・事務局長人道研究ジャーナルVol. 1, 20129