「人道研究ジャーナル」創刊号

「人道研究ジャーナル」創刊号 page 12/216

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Journal of Humanitarian Studies Vol. 1, 2012一方で、80年代に入り、冷戦構造の崩壊とともに世界各地では内戦や地域紛争が頻繁に起こり、政府の統治機能が十分に及ばない、いわゆる「破綻国家」が増大し、このよう....

Journal of Humanitarian Studies Vol. 1, 2012一方で、80年代に入り、冷戦構造の崩壊とともに世界各地では内戦や地域紛争が頻繁に起こり、政府の統治機能が十分に及ばない、いわゆる「破綻国家」が増大し、このような破綻国家では、自然災害や宗教対立、貧困などの諸問題に政府が対応することができず「複合危機(ComplexEmergency)」と呼ばれる事態が生じました。加えて、気候変動、都市への人口流入、経済的な貧困などから世界では複合的な災害(Complex Disaster)が多発し、その規模は拡大してます。さらにHIV/AIDS,マラリア、結核などの感染症は特に開発途上国において紛争、災害と並んで第3の災害の状況を呈しています。また、政府や地元の行政の統治能力不足から援助や支援が被災者に届かない場合も少なくありません。また、欧米を中心に国際社会や世界のマスメディアの関心は地震や津波など突然起こる(suddenonset)災害に集中し、一方、広い土地で緩やかに時間を掛けて起こる大陸型の洪水や旱魃など、徐々に被害が進行する(slow-onset)災害や長期化する武力紛争、それに伴う難民救援などには関心や援助が集まりにくい状況が生まれています。こうした中で人道援助は緊急救援にとどまらず、緊急救援、復旧・復興、災害対策までを視野に入れた活動が望まれています。他方で、開発途上国に対する開発協力は地域に根ざし、その国・地域で、自ら継続的に開発できる持続可能で公平な社会経済の発展が必要とされ、具体的には地域社会で貧困問題、教育・保健・医療へ住民自身が主体的に取り組むことが求められています。以上のとおり、国際救援、国際協力の面を抜き出してみても、近年私たちを取り巻く状況は、経済・社会のグローバル化の波を受けて大きく変化しています。赤十字を取り巻く環境もまた、然りです。こうした変化の中で、中・長期の視点から赤十字に関連する国内外の人道諸問題を調査・研究する機関として、このたび、日本赤十字人道研究センターが発足しました。日本赤十字社は世界187ヵ国の赤十字・赤新月社の中ではユニークな存在です。6万人を超える職員を抱え、92の病院、79の血液センター、28の社会福祉施設を運営する赤十字はほかにはありません。運営形態から見れば、日本赤十字社は施設経営を事業主体とする社であります。換言すれば、施設経営が日本赤十字社の表看板で、実際これまでの赤十字に関する一般のイメージ調査結果からは、第1位は病院(医療事業)、第2位は血液センター(血液事業)となっています。こうした施設やそれに伴う職員による事業展開だけではなく、赤十字の社員(会員)や赤十字のボランティアがもう少し主体となって、さらに、日本赤十字社法の目的・業務にあげられている赤十字の国際活動、災害救護活動、地域での健康・保健活動等の展開が求められると思います。また、日本赤十字社の各事業が有機的に連携し合い、国内外の人道問題に対して、世論啓発などアドボカシーの面で日本赤十字社の果たす役割は増大するのではないでしょうか。現在6つの看護大学とひとつの短期大学を有する赤十字学園には幸いにして赤十字の業務経験があり、赤十字をいろいろな角度から教育研究している教員や研究者がいます。日本赤十字社の「もっとクロス」計画ではありませんが、赤十字看護大学はそのネットワークを活かして、日本赤十字社と連携して赤十字に関する調査・研究を推進し、赤十字看護大学ならではの特色を発揮することができるものと思います。研究センターでは、2011年(平成23年)から3ヵ年計画でつぎの事業の実施を考えています。研究対象によっては文部科学省など外部からの助成金獲得を視野に入れて研究を進めることもできます。10人道研究ジャーナルVol. 1, 2012