「人道研究ジャーナル」創刊号

「人道研究ジャーナル」創刊号 page 132/216

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Journal of Humanitarian Studies Vol. 1, 2012チンゲールは医学の新しい時代を体験した。麻酔を使った外科手術である。医学の進歩に合わせて、看護も新しい時代を迎えることを予感したに違いない。キングス・カレッ....

Journal of Humanitarian Studies Vol. 1, 2012チンゲールは医学の新しい時代を体験した。麻酔を使った外科手術である。医学の進歩に合わせて、看護も新しい時代を迎えることを予感したに違いない。キングス・カレッジ病院に新しい希望を見出したその1854年、またしてもコレラがロンドンを襲った。今回はテムズ川の北側の街に患者が出ていた。ナイチンゲールはミドルセックス(Middlesex Hospital)病院へ看護の応援に行った。病院へはソーホー地区やブロードストリートから患者が送り込まれてきた。ナイチンゲールは患者の衣服を取り替え、身の回りを清潔にした。その時、彼女は患者に娼婦が多いことに気付いた。夜街を不潔にして徘徊している貧しい娼婦のふしだらな生活がコレラと結び付けられた。ナイチンゲールは娼婦の生活を卑下していたのではない。生活環境や公衆衛生の改善がなされない限り病気の予防は成されないと確信していたに違いない。また、哀れな娼婦を見捨てるのではなく反対に手厚い看護を施し、生きることへの希望を持たせることが必要であると考えていたに違いない。その直後ナイチンゲールはクリミア半島へと旅立つがスクタリでの「瘴気説」に基づいた活躍はロンドンの延長戦だったのかもしれない。注1)小玉香津子・尾田葉子訳『看護覚え書き』日本看護協会出版会, 2004. p.162)脇村孝平著『飢饉・疫病・植民地統治、開発の中の英領インド』名古屋大学出版会, 2002年. p.333 )スティーヴン・ジョンソン著矢野真千子訳『感染地図、歴史を変えた未知の病原体』河出書房新社, 2007年4 )メアリー・ドブソン著小林力訳『Disease人類を襲った病魔』医学書院, 2010年. p.445 ) Peter Vinten Johansen, Howard Brady, Niegel Paneth, Stephen Rachman, Michael Rip, Chlera, Chloroform, and theScience of Medicine, A life of John Snow, Oxford, 2003. p.170-16 ) Cecil Woodham Smith, Florence Nightingale. Constable, 1950. p.617)前掲、『感染地図』河出書房新社, p.109-113前掲、『Disease人類を襲った30の病魔』医学書院, p.49参考文献(注の掲載分は省く)Mark Bostridge, Florence Nightingale, Penguin Books,2008.ヒュー・スモール著田中京子訳『ナイチンゲール神話と真実』みすず書房, 2003年ヘンリー・メイヒュー著松村昌家/新野緑編訳『ヴィクトリア朝ロンドンの下層社会』ミネルヴァ書房,2009年湯槇ます監修薄井坦子,小玉香津子,田村真,小南吉彦編訳『ナイチンゲール著作集1~3巻』現代社、1975年130人道研究ジャーナルVol. 1, 2012