「人道研究ジャーナル」創刊号

「人道研究ジャーナル」創刊号 page 133/216

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Journal of Humanitarian Studies Vol. 1, 2012アーカイブス紹介一次史料について考えること~ICRC&連盟のアーカイブス~(1)東浦洋一次史料を追い求めてTessa Morris-Suzukiの“Exodus to North Korea - Shadows....

Journal of Humanitarian Studies Vol. 1, 2012アーカイブス紹介一次史料について考えること~ICRC&連盟のアーカイブス~(1)東浦洋一次史料を追い求めてTessa Morris-Suzukiの“Exodus to North Korea - Shadows from Japan's Cold War”は、ジュネーブの赤十字国際委員会(以下「ICRC」)アーカイブス所蔵の史料をもとに出版された。大村収容所に関するICRCの記録を調べる中で、この文書類はどこかおかしいと彼女が感じたのは、北朝鮮帰還事業関係文書であった。その2か月前の2004年4月29日の総会決定により、ICRCは1996年に定めた規則を改定して、1951年から1965年までの公文書について、機密指定解除手続きを終え、一般に公開した。アーカイブス目録には、関連ファイルが延々と何頁にもわたっている「このアーカイブスはまさに掘り出し物の山だった。」1その後、Morris-Suzukiは日本赤十字社の情報プラザを訪れ、『日本赤十字社社史稿』第7巻にある北朝鮮帰還事業の記述約80頁のコピーを入手している。Robert Armstrongの言葉を借りて、日本赤十字社のこの歴史の記述には、“真実の著しい節約(remarkably economical with thetruth)”があり、「始点の選定がその後に来る物語の意味を決定してしまう典型的な事例」であると断定する。日本赤十字社の公式記述が1956年4月から物語を始めているが、その数か月前から、おびただしい数の極秘の、そして実に興味深い文書が、東京、ジュネーブ間で乱れ飛んでいた事実を都合よく省略しており、「これらのメッセージは、帰還事業の発端と意味に、全く異なった光を投げかけている」2と言うのである。何という不幸なことかと、私は思う。『社史稿』6巻の2章「引き上げ援護」を見落としているからである。その中で、北朝鮮残留の邦人帰国交渉において、在日朝鮮人問題の解決問題をも議題に乗せるよう、朝鮮赤十字会から要請を受けたこと、それに対して、当時の赤十字社連盟(現国際赤十字・赤新月社連盟、以下「連盟」)及びICRCとの接触の記述がある3のを知らなかったですまされるであろうか。朝日新聞社が「驚愕の新事実!!」というセンセーショナルな帯をつけて翻訳を出した際に、日本赤十字社の国際部長の立場から、一度ICRCのアーカイブスにどのような資料があるのか調べてみたいと幹部会で述べたことがあった。残念ながら、「今さら北朝鮮帰還でもあるまい」という意見があり、果たせぬままに時が過ぎた。連盟創設文書の発見2007年4月から3年間、広尾の日本赤十字看護大学の客員という、研究費もないかわりに、与えられた授業だけで、あとは半ばフリーの立場を得た。そこでそれまで温めてきた自身の研究テーマを進めることにした。1 1919年の連盟創設の経緯、2 ICRCと連盟の統合(fusion)研究、3(1)日本赤十字看護大学人道研究ジャーナルVol. 1, 2012131