「人道研究ジャーナル」創刊号

「人道研究ジャーナル」創刊号 page 134/216

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Journal of Humanitarian Studies Vol. 1, 20121928年のハーグにおける赤十字国際会議での国際赤十字規約の採択の際の北欧、とくにスウェーデン赤十字による修正動議(第6条)とその否決を含む連盟創設前後の10年に....

Journal of Humanitarian Studies Vol. 1, 20121928年のハーグにおける赤十字国際会議での国際赤十字規約の採択の際の北欧、とくにスウェーデン赤十字による修正動議(第6条)とその否決を含む連盟創設前後の10年についてである。日赤本社の情報プラザに保管されている蜷川新の手書きの文書を読み解くうちに、1919年5月5日にパリで、米英仏伊日の5社委員会代表が5部署名し、各社に各1部持ち帰ったという文書(連盟規約)の行方探しへの衝動に駆られた。当時日本赤十字社の代表として、署名した蜷川新が遺したファイルには、この文書は本社が別途保管しているとある。本社の文書整理をされた先輩たちに尋ねても、そのようなものは見たことがないと言う。ジュネーブの連盟事務局のGrant Mitchell(Manager, Library and Archives Unit)からもアメリカ赤十字が当時の文書を全部持って行ってしまったので、連盟創設にかかる文書はほとんど残っていないとの返事であった。アメリカ赤十字へ照会したところ、1980年代当初までの文書はすべて国立公文書記録管理局(United StatesNational Archives and Records Administration, NARA)に引き渡したと回答があった。メリーランド大学カレッジパーク・キャンパスに隣接する「アーカイブスⅡ」または「アーカイブス・カレッジパーク」と呼ばれる公文書館で調べたが、わずか3日の滞在では見つけることができなかった。先進諸国の幹部による支援社会議(Donor Forum)の幹事役を続けていたのを幸い、ロンドン・シティに移転したばかりのイギリス赤十字のアーカイブスを尋ねたこともある。イタリア赤十字の当時の総裁Massimo Barra(現赤十字・赤新月常置委員会委員)に同社のアーカイブスを調べてほしいと頼んだりもした。イタリア赤十字から送られてきたのは、すでに私が入手済みのものばかりであった。5社のうち残されたのは、フランス赤十字であったが、同社のアーカイブスは整理されていないから、無意味ではないかという示唆を得て、パリ訪問はいまだ果たせないでいる。半ば諦めかけ始めた矢先であった。探し続けていると、求めている文書がある日突然目に飛び込んでくるのを何度か経験してきた。2011年1月、阪神淡路大震災関連のシンポジウムのパネリストとして呼ばれた帰り道、名古屋で途中下車して、日本赤十字豊田看護大学へ立ち寄った。博物館明治村所蔵の日赤の歴史的文書を見に行ったのである。目録で連盟関係史料があることは承知していたが、大した期待をしていたわけではない。東京に帰る時間が迫る中、その日手にしたファイルの最後の部分に、追い求めていた文書はあった。正直に言おう。まさかこのような重要文書が無残にも穴をあけられ、しかもB4変形をA4ファイルに収めるために、下部を無造作に折り曲げられてファイルされているとは思ってもみなかった。米英仏伊日の赤十字社の代表5人が署名した連盟規約と付則の2つの文書である。許可を得て、デジタルカメラを使い、早速連盟にこの発見を伝えた。この付則の存在は連盟事務局においても、誰も知らない文書であった。しかも、署名時に字句の修正をしたと思われる箇所が2つある4。連盟規約-各国代表の署名些細なエピソードNHKのカルチャーラジオの日曜版(夜8時からの1時間番組)の2010年2月放送用に、「人道の旗の下に~赤十字150年」と題して、4回分の公開録音をNHK文化センター青山教室で行った。132人道研究ジャーナルVol. 1, 2012