「人道研究ジャーナル」創刊号

「人道研究ジャーナル」創刊号 page 138/216

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Journal of Humanitarian Studies Vol. 1, 2012にある業者の保管庫を借りている。連盟のエントランス、オーディトリウム(理事会会場)などは20年ほど前に増築されたが、事務所部分は築後50数年経ち、建て替えを考え....

Journal of Humanitarian Studies Vol. 1, 2012にある業者の保管庫を借りている。連盟のエントランス、オーディトリウム(理事会会場)などは20年ほど前に増築されたが、事務所部分は築後50数年経ち、建て替えを考えねばならない状況にある。また、裏手のプレハブの事務所はすでに耐用年数を過ぎており、取り壊しをすることになっている。Grant Mitchellはアーカイブスにも光が当たることを強く希望していた。むすびにかえてICRCの一次史料を見て、私が考えたことは、重要文書は印刷して保管すれば、オリジナルは破棄しても良いという考えは誤りではないか、ということである。ICRCや連盟が、アーカイブスの公開を真剣に考えだしたのは、1990年代に入ってからである。赤十字運動だけでなく、国連機関、国際機関でも、時期はほぼ同じ頃だという。各機関が「説明責任(accountability)」「透明性(transparency)」「公開性(openness)」という言葉を盛んに使うようになった時期と一致している。アーカイブスをきちんと設置せずに、比較的短期間に文書破棄を促すやり方は、国際社会で求められている「説明責任」「透明性」「公開性」に反すると言ったら、いささか言い過ぎだろうか。我々は後年の歴史的な評価に耐える仕事をする責任がある。赤十字の仕事は、歴史による検証を求められるものであることを改めて自覚しなければなるまい。1 Tessa Morris-Suzuki: "Exodus to North Korea ? Shadows from Japan's Cold War", 2007, p.32(田代泰子訳『北朝鮮へのエクソダス』、朝日新聞社、2007, 38頁)2 Ibid, p.83(邦訳98頁)3日本赤十字社社史稿第6巻262~268頁4 By-laws of the League of Red Cross SocietiesのArticle IIの"the first such regular meeting to be held on the second Mondayin May, 1920”と第2月曜日と日にち限定であった"on"の部分を"not later than"と修正したこと、さらにArticleIVにおいて連盟加入について"by unanimous invitation of the Board of Governors"とあるのを、"by unanimous vote ofthe Board of Governors"と修正している。なお、連盟規約のArticle VII. Financial arrangement.の"The general plan ofthe International Bureau of the Universal Postal Union may be used as a basis for determining the share of each member."に×しるしが付けられているが、誰が、何の理由で付けたかは不明である。当初の連盟運営資金はアメリカ赤十字が負担することになっていたが、将来的に各社が負担する場合には万国郵便連合の国際事務局に対する各国の分担金を根拠に、各社の分担額を決定することになるということを、当時の日本赤十字社の幹部(時の社長石黒忠悳)がつけたのではないかと考えられる。5「日本赤十字」第51号31~32頁6「日本赤十字社史稿」514頁7 http://www.icrc.org/eng/assets/files/other/irrc_856_pitteloup_eng.pdf参照8 NHKBS1『国際赤十字の光と影』第2回ホロコーストの試練」(BBC、1998年製作)、1998年11月8日放送。また、http://resources.ushmm.org/film/display/detail.php?file_num=5012及びhttp://resources.ushmm.org/intermedia/film_video/spielberg_archive/transcript/RG60_5019/A67D46B8-2B61-41F6-877D-6FF0E04279F4.pdf参照9 Jean-Claude Favezの著作のうち、とくに以下を参照。Une Mission impossible? Le CICR, les deportations et les campsde concentration Nazis, Lausanne, Payot, 1988 (reed, 1997); Das Internationale Rote Kreuz und das Dritte Reich. Warder Holocaust aufzuhalten?, Zurich, Neue Zurcher Zeitung, 1989; Warum schwieg das Rote Kreuz?: eine internationaleOrganisation und das Dritte Reich, Munich, Deutscher Taschenbuch Verlag, 1994: The Red Cross and the Holocaust,Cambridge University Press, 19991 0ちなみに、ICRCの社史は第4巻まで刊行されているが、今後は研究者による、研究発表に任せ、ICRC独自に社史として刊行するのは、少なくとも奨励していないそうである。現在、元ICRCの派遣員であったJean-FrancoiseBergerがMarcel Jonodについて著作を考えているようである。1 1 1854年以来の文書とは、1863年のICRC設立以前に取り交わされた書簡のことである。1 2このファイルには、Henry Duntant, Gustave Moynierらの手書きの文書が含まれている。なお、1914年までの議事録はProces-verbaux des seances du Comite international de la Croix-Rouge: 17 fevrier 1863?28 aout 1914としてJean-Francois Pitteloud,Caroline Barnes, Francoise Dubossonの編集により、1999年にSociete Henry DunantとComite international de la Croix-Rouge両者名で出版されている。136人道研究ジャーナルVol. 1, 2012