「人道研究ジャーナル」創刊号

「人道研究ジャーナル」創刊号 page 140/216

電子ブックを開く

このページは 「人道研究ジャーナル」創刊号 の電子ブックに掲載されている140ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「電子ブックを開く」をクリックすると今すぐ対象ページへ移動します。

概要:
Journal of Humanitarian Studies Vol. 1, 2012チー二氏の報告に目を移す。数か月分ずつまとめられた手紙や無線電報の束をのぞく。外務省や俘虜情報局の名前が見える。送金が届かず、日本にいる俘虜収容者に必要な医....

Journal of Humanitarian Studies Vol. 1, 2012チー二氏の報告に目を移す。数か月分ずつまとめられた手紙や無線電報の束をのぞく。外務省や俘虜情報局の名前が見える。送金が届かず、日本にいる俘虜収容者に必要な医薬品が渡せないこと、英語の電報は届くこと、俘虜収容キャンプ訪問記録などが次々と送信されている。中にはスパイ容疑につき、ICRCとスイス連邦政府の親展文書が含まれていたりもする。電報の1枚目には、左上にピンクの収受メモが貼付され、到着日欄には紙面下方と同じ赤い日付スタンプが押されている。メモは、返信日やコピーを渡した相手の名前、担当者名、翻訳して渡した相手、関係文書については手書きである。“TRANSMISSIBLE”(伝達可)は緑のスタンプ、“PRISONNIERS INTERNESCIVIL”(国内民間俘虜)は赤いスタンプ、電文中の救援箇所を示す“SECOURS”は赤鉛筆の枠囲みと赤いスタンプだ。青鉛筆や鉛筆での覚え書きがそのままにされ、誤字には手書きでスペルが書き足されている。何かの計算だろうか、いくつもの数字が書き込んである。紙面が足りなかったのか紙を貼り付けて、読み手のメモを書き足していたりもする。破けていたり、クリップを止めた後があったりと、ここでは作成された当事の姿そのままの文書を、直に確認することができる。史料が生きていて、自分が歴史の中に入り込む。そして、いつの間にか、私たちの日常も振り返ればこうした歴史となっていくのだと感じ始めている。ICRCアーカイブスの一面である。138人道研究ジャーナルVol. 1, 2012