「人道研究ジャーナル」創刊号

「人道研究ジャーナル」創刊号 page 141/216

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Journal of Humanitarian Studies Vol. 1, 2012日本赤十字社の看護婦養成に関する史料編纂活動-赤十字の歴史と「もっとクロス」-(1)川原由佳里日本赤十字社の看護師養成事業は、1877年(明治10年)の西南戦争の....

Journal of Humanitarian Studies Vol. 1, 2012日本赤十字社の看護婦養成に関する史料編纂活動-赤十字の歴史と「もっとクロス」-(1)川原由佳里日本赤十字社の看護師養成事業は、1877年(明治10年)の西南戦争の折、佐野常民が日本赤十字社の前身である博愛社を設立し、看護人・看護婦養成の必要を説いたのが始まりです。かつては「看護といえば赤十字、赤十字といえば看護」といわれるほど、日本最大の規模と高い教育水準を誇ってきました。卒業生は全国各地で活躍し、医療や看護の水準を高め、明治、大正、昭和を通じて近代看護の創立と発展に大きな役割を果たしてきました。日赤が本格的に看護婦養成を開始したのは1980(明治23)年。日本赤十字看護大学には、創立以来の貴重な史料が多数残されています。この史料の保存伝承は従来からの課題でしたが、近年の看護教育改革を受けて、日赤でも看護専門学校や短期大学の改組、閉校が進んでいること、さらには戦後65年が経ち、戦前戦中の看護については当時の体験を語る人が少なくなったことから、史料の散逸を防ぎ、先輩方の口述記録を残すことが、急を要する課題となってきました。こうした背景から、日本赤十字看護大学の新校舎落成をきっかけに、2005(平成17)年、数名の教員で看護歴史研究室を立ち上げました。日赤の看護に関する史料を後世に残るかたちで保存し、教育や研究に役立てることが目的です。活動はおおきく、1目録(データベース)作成、2史料の収集・整理・保存、3閲覧・利用支援、4展示、5研究に分けられます。当初、この活動には、日本赤十字社から助成が行われてきましたが、2011年(平成23)年度より、国際人道研究センターから予算立てされることになり、今回、紹介の機会をいただくことになりました。歴史資料は、先人たちの足跡を今に伝えてくれます。過去の人々が、その時代のさまざまな出来事に際して何を感じ、考え、行動してきたのか。思いをめぐらせながら赤十字の歴史と「もっとクロス」することで、赤十字が身近に感じられたり、活動へのエネルギーが湧いたり、あるいは進むべき方向を再確認できるかもしれません。1.所蔵史料とデータベース1)所蔵史料の特徴日本赤十字看護大学史料室が所蔵している史料の中心は、看護婦養成に関するものです。生徒名簿や教育に関する書類、教科書・参考書・掛図などの教育材料、機関誌、関連図書・資料などがあります。写真や物品史料が豊富にあるのも特徴です。個人写真、式典や修学旅行などで撮影された集合写真、生徒の日常を写したスナップの他、戦時救護や災害救護での活動写真も数多く所蔵しています。日本を代表する著明な写真家により撮影されたものもあり、質がよいのも特徴で、展示の他、書籍への掲載等にもよく利用されています。物品には、制服、制帽、記章や勲章、医療・看護用具、人形等があります。明治期から昭和前期(1)日本赤十字看護大学人道研究ジャーナルVol. 1, 2012139