「人道研究ジャーナル」創刊号

「人道研究ジャーナル」創刊号 page 31/216

電子ブックを開く

このページは 「人道研究ジャーナル」創刊号 の電子ブックに掲載されている31ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「電子ブックを開く」をクリックすると今すぐ対象ページへ移動します。

概要:
Journal of Humanitarian Studies Vol. 1, 2012ICRC事業局長による2012年所信表明ピエール・クレヘンビュール(1)Emergency Appeals 2012: Introduction by the Director of Operationsより抜粋ここでは、武力紛争....

Journal of Humanitarian Studies Vol. 1, 2012ICRC事業局長による2012年所信表明ピエール・クレヘンビュール(1)Emergency Appeals 2012: Introduction by the Director of Operationsより抜粋ここでは、武力紛争およびその他の暴力を伴う事態によって被害を受ける人たちが直面している状況、ならびに、2011年10月末時点での世界約80カ国のICRC現地代表部/事務所の主な活動目的と予算について解説します。現代の武力紛争の傾向ICRCが活動対象としている、現在の武力紛争やその他の暴力を伴う事態を分析すると、極めて多くの特徴が強く見られます。まず一つ目の特徴は、武力衝突の結果の多様性です。「アラブの春」として知られるようになった北アフリカ、中近東での民衆蜂起に見られたように、この一年で起きた武力衝突は、それぞれ異なる結果を導きました。状況分析や様々な事態に対する計画・準備を行っていても予期せぬ事態は起こり、それにどう対応するかが重要であるということが明らかになりました。人道支援活動に関しても同様のことが言えます。北アフリカ・中東各国で起きた衝突には、共通する特徴が見られる一方、明白な違いもあります。例えばリビアの例は国際的にも非国際的にも完全に武力紛争といえるものでしたが、その他の国は武力紛争と呼ばれるレベルまでの展開を見せず、国家治安維持軍の弾圧を受けました。これら一連の出来事の中・長期的結果を述べるにはまだ時期尚早であるといえます。今現在、法的・政治的・社会的側面から平和的発展段階にある国もあれば、武力紛争が続くことが予想される国もあります。二つ目の特徴は、2001年9月11日の攻撃から10年が経過した今でも、いわゆる“アルカイダ組織戦争”は進展を続けているという点です。NATOや米国がアフガニスタンやイラクでの軍事活動再編を行う中、無人飛行機が導入され直接的な攻撃が減少するなど、徐々に新しい動きが出ています。第三に、非国際武力紛争の長期化があります。このような武力紛争が明白な理念に起因することは稀で、むしろ経済的動機や時には犯罪が引き金になっているものが大半を占めます。こうした衝突が長期間(20 ? 40年間以上)続くと、無法状態が蔓延します。軍の力が及ばないことで、治安が不安定になるだけでなく、社会、保健衛生および教育サービスが行き届かなくなり(1)ICRC国際救援派遣員としてエルサルバドル(1991-92)、ペルー(1992-93)に着任し、アフガニスタン(1993-95)ではジャララバード事務所所長を経てカブール副代表に就任。その後ボスニア・ヘルツェゴビナ代表など複数の管理職ポストを歴任。1998年よりジュネーブ本部においてコソボ紛争特別委員会を率いるなど中央・南東ヨーロッパを管轄し、陣頭指揮をとる。ICRC総裁個人顧問(2000年)を経て、2002年7月より現職。スイス人、1966年生まれ。人道研究ジャーナルVol. 1, 201229