「人道研究ジャーナル」創刊号

「人道研究ジャーナル」創刊号 page 32/216

電子ブックを開く

このページは 「人道研究ジャーナル」創刊号 の電子ブックに掲載されている32ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「電子ブックを開く」をクリックすると今すぐ対象ページへ移動します。

概要:
Journal of Humanitarian Studies Vol. 1, 2012ます。こうした地域は次第に非人道的グループの拠点となります。公的なグループもあれば、私的なグループもあり、政府勢力もあれば、反政府勢力もあります。理念や政治....

Journal of Humanitarian Studies Vol. 1, 2012ます。こうした地域は次第に非人道的グループの拠点となります。公的なグループもあれば、私的なグループもあり、政府勢力もあれば、反政府勢力もあります。理念や政治的目標ではなく、不法収入の向上を求め、支配地域の住人に極めて残忍な暴力行為を行うこともあります。国によっては、社会構造そのものが、組織化された戦時経済制度に変わってしまったところもあります。そうした複雑な状況下で、政治家、または中立者として関わることは困難を極めます。有力者は閣僚や議員としてのポジションよりも、紛争関連のビジネスで利益を得ることを求めており、社会的道義や公共の利益よりも私欲に関心が集まっています。国を跨いだ地域的組織犯罪が徐々に深刻化している地域もあります。関与するグループの組織レベルや国家組織への影響力、国境周辺の支配力、国際的活動範囲が脅威となっています。これら組織が国家治安維持軍や、場合によっては他犯罪組織と衝突することで、現地住民や移民が虐待や暴力の恐怖にさらされています。世界は経済/財政危機にいまだ見舞われています。国際食料価格指標(International food priceindexes)は2011年初めに最高値を記録し、武力紛争や社会からの排除、失業、その他の圧力に苛まれている多くの人々にさらなる打撃を与えました。出稼ぎ労働者の仕送りが様々な背景により減少し、それに頼っていた家族にも影響を及ぼしています。世界のあちこちで増加している食糧需要と、干ばつや洪水などの自然災害により引き起こされているこの状況は、治安悪化と紛争にも拍車をかけています。2011年のICRCの活動2011年、ICRCは突如発生した多くの危機に対して効果的に対応してきました。とりわけコートジボアールとリビアで同時に発生した衝突において効果が発揮できたといえます。コートジボアールでは、様々な組織と長年関係を構築していたこと、衝突の多い地域で以前から活動していたこともあり、選挙後に発生した武力衝突に素早く対応することができました。一方、リビアではそれまであまり活動をしていなかったため、住民へのアクセスを得るために、当局との関係構築から始める必要がありました。ICRCはまた、シリア、チュニジア、イエメンでの衝突に対しても対応してきました。ICRCがこうした危機に対処できた背景には、スタッフの緊急配置システムの向上、緊急支援への準備、そして活動に必要不可欠な各国赤十字社・赤新月社とのパートナーシップがあります。長引く武力紛争やその他の暴力を伴う事態に対しICRCが活動することができたその他の要因としては、これまでの多岐に渡る活動、人々の元へ駆けつけ寄り添う姿勢、そして組織の中立性、独立性、公平性があげられます。2011年当初の現場活動のための協力要請額は10億4,700万スイスフラン(約933億9,250万円1)でした。その後ICRCは計1億5,900万スイスフラン(約141億8,300万円)に上る、5件の追加支援要請(アビジャン、コートジボアール、リビア2回、ソマリア)を出しました。この地域の他にも、アフガニスタン、コロンビア、コンゴ民主共和国、パキスタン、フィリピン、イラク、イスラエルと占領地域、南スーダン、スーダン、イエメンなど、多くの予算を必要とする緊急活動が出てきたため、初期計画で当てていた現場活動費から7,900万スイスフラン(約70億4,700万円)をこれら緊急支援活動に補填。予定していた活動に影響が出た国もありました。11スイスフラン=89.2円で計算30人道研究ジャーナルVol. 1, 2012