「人道研究ジャーナル」創刊号

「人道研究ジャーナル」創刊号 page 39/216

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Journal of Humanitarian Studies Vol. 1, 2012国内避難民(IDPs)を保護し支援するQ.ことは、難民の場合と違い、相当な困難が伴うと察します。具体的にどのような困難があるのでしょうか。またその困難に対して、IC....

Journal of Humanitarian Studies Vol. 1, 2012国内避難民(IDPs)を保護し支援するQ.ことは、難民の場合と違い、相当な困難が伴うと察します。具体的にどのような困難があるのでしょうか。またその困難に対して、ICRCはどのような計画、方針で対処していますか?A.まず、難民とのIDPsの違いは、難民は国境を越える。そして、隣接国で避難場所を求めるのに対し、IDPsは自国内にいながら住処を失い行き場を無くした人々です。難民については、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)が、IDPsについては紛争地で活動するICRCが、これらの人々を保護し支援するという任務を課されています。IDPsの問題というのは近年の紛争に於いて大変重要な問題、現象であります。先程もお話しした通り、近年は、国内紛争がほとんどで、それら国内紛争ではしばしば、ある一定の地域社会を攻撃のターゲットにします。当然のことながら、住民は攻撃の的となった地域を逃れ、国内の別の場所に避難先を求める訳です。例えば、スーダン西部のダーフールには沢山のIDPsキャンプがあります。コンゴ民主共和国でも、毎年、何千万もの人が軍の不正、不当な行為から逃れようと国内避難民となっています。アフガニスタンにも沢山のIDPsがいます。IDPsの保護、支援で最大の難点はアクセス、すなわち、彼らが避難しているところまで行けるかということです。紛争の最中ですから、チームメンバーの安全にも関わります。武装グループと交渉した上で、IDPsへアクセスしなければなりません。また、多くの国で見られる現象ですが、IDPsが住処を追われるのは一度ではありません。武装集団が自分たちのところに来るたびに新たな場所へ避難しなければならず、10回以上、20回近くも避難所を移動したという家族もいました。ですから、これらのIDPsが何処にいるのかを探し出し、彼らのニーズを聞き出し、必要なものを届けることは非常に大変なことです。状況が許す場所では、ICRCは、IDPsが出るのを防ぐ、すなわち、住民が住み慣れた場所で生活を続けられるようなプログラムも試みています。例えば、ダーフールでは、彼らの生計に重要な家畜を守るためのワクチン接種や医療サービスを彼らの村の近くで提供することで、別の場所へ避難しなくても良い状況を作っています。最大の難点はやはり、アクセスとスタッフの安全の問題です。国際紛争下であれば、ICRCは自動的に任務を課されますから、より活動しやすいのは事実です。ジュネーブ諸条約には、ICRCが人道的活動を行う権利を認める条項があります。一方、非国際紛争の場合、ICRCは支援を申し出ることは出来ますが、各国は拒否することも出来るわけです。これは、IDPsの問題だけではなく、例えば、被拘束者の問題でも同様です。国際紛争の場合、ICRCに自動的に被拘束者を訪問する機会が与えられるわけですが、非国際紛争の場合、逐一当事者と交渉しなければなりません。来年はICRC創設150周年ですね。何かQ.企画されていることはありますか?近年では、ソルフェリーノの戦いからA. 150年の節目の際に記念イベントを、それから、ジュネーブ諸条約締結60周年も祝福しました。ICRC創設150周年については、大々的なイベントの開催という点では、まだ何も着手しておりませんので、特にここでご報告できる有益な情報はありません。ただ、現在取り組んでいることとして、2014年が第一次世界大戦開始から100周年となるため、ICRCが所有する当時の保存記録、資料の復元作業を行っています。これは壮大なプロジェクトですが、人道研究ジャーナルVol. 1, 201237