「人道研究ジャーナル」創刊号

「人道研究ジャーナル」創刊号 page 58/216

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Journal of Humanitarian Studies Vol. 1, 2012定をする必要がある。この点、被災前より医療コーディネーターを指名していた宮城県の実績は大変素晴らしかった。各都道府県は普段よりこの組織を立ち上げ、コーディネ....

Journal of Humanitarian Studies Vol. 1, 2012定をする必要がある。この点、被災前より医療コーディネーターを指名していた宮城県の実績は大変素晴らしかった。各都道府県は普段よりこの組織を立ち上げ、コーディネーターを指名しておき、繰り返し組織を超えた災害訓練を行っておく必要がある。(3)通信手段の確保初期の情報を確実に入手するには、通信手段の確保が大事である。今回はNTT固定電話・携帯電話はほとんど不通であった。また衛星携帯電話もつながらない地域があったり、使い方の訓練が不十分であったり、バッテリーチャージが不足していたなど、やはり訓練不足が指摘される。広域災害・救急医療情報システム(EMIS)は原則作動したが、未導入の県があることや入力遅れなどの問題があった。インターネット利用のできる衛星電話の整備が重要であるとともに、MCA無線(デジタル広域通信用無線)の活用も検討されるべきであろう。(4)宿泊施設救護班は本来自己完結型でなければならないが、災害の種類・季節などにより困難なこともある。救護が長期に及ぶ場合は、中でも宿泊場所の確保が問題となる。いくつかの自治体が、移動式(車両)あるいは簡易組み立て式のスタッフ用宿泊施設の準備を検討することも必要ではないだろうか。(5)救護病院船・被災者支援船の整備配置災害のない時の利用に費用がかかるため、国レベルで病院船の建造・維持を進めることが望ましい。また現在「宝の持ち腐れ」状態になっているテクノスーパーライナーを国が買い入れ活用すべきである。(6)原発事故への対応全国に原発が多数あるわが国では、このような事故が絶対に起きないと断定できないことが分かった。万が一の事態に備えて、医療救護活動はもとより救護班の行動に関するマニュアルを作成し、種々の装備を揃え、繰り返しの訓練を行う必要がある。(7)地域住民データの保管方法の検討地震・津波その他の災害により住民データを失わないために、電子的にしかも複数の場所に分散して保管すべきである。すでに行っている自治体もあるようだが、自治体同士で契約を結び、厳重な情報管理のもとに全国的に拡大すべきである。4.おわりに平成23年3月11日に発生した東日本大震災の医療救護活動の全体を俯瞰するとともに、日赤の活動を紹介した。その上で、今後に向けて対応を検討すべき災害医療の課題・方向について提案した。超急性期から中・長期を通じて医療救護活動を継続できる組織は日赤のみであることを再確認し、その責任の重要性を自覚するとともに、改善すべき点が多々あることも理解し、さらに努力を重ねて今後の活動に生かしていきたいと考える。56人道研究ジャーナルVol. 1, 2012