「人道研究ジャーナル」創刊号

「人道研究ジャーナル」創刊号 page 68/216

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Journal of Humanitarian Studies Vol. 1, 2012見と教訓」である。高所得国に対象を絞った理由は、よく発達したインフラとサービス、高度で豊かな行政と産業、65歳以上の人口の急増、総合的な福祉制度といった、多く....

Journal of Humanitarian Studies Vol. 1, 2012見と教訓」である。高所得国に対象を絞った理由は、よく発達したインフラとサービス、高度で豊かな行政と産業、65歳以上の人口の急増、総合的な福祉制度といった、多くの特徴が共通しているからである。高所得国の多くも様々な災害に脅かされているが、災害に対処するメカニズムは、低所得国とは著しく違っていることが多い。これらの国々の赤十字社・赤新月社もまた、所属地域の伝統や文化を反映して、それぞれ非常に異なっている。評価では、2011年の日赤の活動と、2005年にニューオーリンズや米国南部諸州を襲ったハリケーン「カトリーナ」、2011年にオーストラリアのクイーンズランドで発生した洪水、同年ニュージーランドのクライストチャーチで起こった地震への対応と比較している。しかし、一般的な結論をむやみに多く引き出すのは誤りである。教訓を学ぶことはできるが、それぞれの国は、特有の条件を分析し、検討したうえで、大規模災害への計画と対応を行う必要がある。低所得国における災害対応と防災では、回復力を高めることや、限られた資源で対策を講じることが、どうしても必要になるが、これについても同じことが言える。緊急対応、救援、避難所日本を再び巨大災害が襲う確率は非常に高いため、日赤は、包括的な緊急対応計画を作成するべきであり、そのためにいくつかの事項を検討する必要がある。第1に、政府の国家災害管理計画における赤十字の役割と権限について、議論と見直しを行う必要がある。次に、いくつもの地域が深刻な被害を受ける巨大災害において、異常に膨れ上がるニーズを満たすよう規模を拡大する戦略を策定する必要がある。そこでは、大規模災害における前線での災害管理調整センターとしての日赤医療機関や支部の役割についても検討するべきである。独自の現地評価を行う能力や、他の機関との情報交換を行う能力は決定的に重要であり、軽視できない。特に今回の東北のように、災害の影響により一部の地方自治体が機能しなくなった状況では極めて重要である。地方自治体の災害対応計画は、地震災害の確率に基づいたが、津波による被害は想定されていなかった。赤十字病院の院長が著者に語った所によると、彼らは地震災害に対するマニュアルしか用意しておらず、日赤の医療チームの医療キットは、圧挫損傷を含めて、地震による怪我を治療するために作られたものであった。氷のように冷たい破壊的な波の中で、人々は生存か死亡かのどちらかに別れたため、津波による外傷はほとんど発生しなかった。避難者の医療ニーズは、主として慢性疾患や、避難所生活での緊張に起因する病状に関するものであった。日赤は、効果的な緊急救援の方法を検討するため、そして被災者の再起を助けるために、国および地方レベルで適切な政府機関との協力体制を積極的に発展させるべきである。NGOなどの組織との間でも同様の協力を行い、情報共有と各機関の計画についての相互理解を向上し、将来の災害に備えて活動の連携を推進するべきである。福島第一原子力発電所の事故と原子力防災態勢のための教訓大規模産業災害における日赤の役割と責任も明確にしておく必要がある。赤十字運動は、原子力事故の発生後に被災者への援助を行うことと、災害による人道被害への対処方法を定めることの両面において、日赤との提携を継続するべきである。赤十字運動においては、原子力事故による人道被害への対処に際して、各国赤十字社の国内と世界での役割、ならびに赤十字国際委員会(ICRC)66人道研究ジャーナルVol. 1, 2012