「人道研究ジャーナル」創刊号

「人道研究ジャーナル」創刊号 page 69/216

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Journal of Humanitarian Studies Vol. 1, 2012とIFRCが果たすことのできる役割を明確にする、具体的な戦略またはガイドラインを策定することが重要である。私見では、化学、生物学的事故など、あるいは破壊活動やテ....

Journal of Humanitarian Studies Vol. 1, 2012とIFRCが果たすことのできる役割を明確にする、具体的な戦略またはガイドラインを策定することが重要である。私見では、化学、生物学的事故など、あるいは破壊活動やテロリズムによって引き起こされる他の産業災害をも含めた、幅広い視野で行うことが望ましい。たとえば、1984年にインドのボパール市で、ユニオンカーバイド化学工場からメチルイソシアネートが漏出した大惨事の後には、人道的ニーズは莫大であった。これは、世界最悪の産業災害の1つである。55万人以上の負傷者を出し、内4,000人近くに重度の生涯的な後遺障害が生じた。この事故に起因する死者は、最近の推計によると2万5000人にのぼる。日本では、化学物質のゆっくりとした放出によって数千人が犠牲になった悲劇的な産業災害の例として、水俣湾と新潟でのメチル水銀の放出が挙げられる。チェルノブイリと福島第一での原子力災害を経て、今日では人道的介入の経験が幅広く蓄積されている。2011年にジュネーブで開催されたIFRC総会の決議で、そのような協力体制を築くことが決定された。そのプロセスは、IFRC事務局の主導によって進められ、日赤など、関心を持つ数ヵ国の赤十字社が参加する。目標は、今後数年以内にガイドラインを公表することである。評価と準備態勢大震災の発生後、全体的な状況と主なニーズがある程度はっきりと把握されるまでには、10日から14日を要した。6月に入ってからも、一部の市町村は、各地区で優先すべきニーズの把握に苦慮していた。地方に分散した日本の災害管理システムが、課題をいっそう複雑にしていた。市町村は、災害の評価と対応における最も重要な責任を担っている。主要な市町村職員の多くが死亡し、行政は事実上まったく機能しなくなった。県は、被災地の市町村からの情報に頼っていたが、通常の経路で情報を得ることは困難であった。救助および緊急対応機関が、情報のギャップを埋めるために協力したが、全国的に状況を把握し、優先すべきニーズを決定するまでには時間がかかった。日赤も、独自の評価メカニズムを持っていないため、対応を行うための基礎として市町村からの情報に頼っていた。自発的な救援の流れが、混乱を増大させた。しかし日赤には、各県と密接に協力しあう支部があり、情報が入ればただちにアクセスすることができた。この情報は本社に伝えられ、社長の指導力の下でタスクフォースが連日会合を持った。日赤本社は、内外の情報源から最も信頼できる情報を収集するように努力した。提携各国の赤十字社から災害管理専門家の一団が招聘され、被災直後の現地を視察し、日赤に様々な課題を指摘した。日赤は、最も弱い人々に手を差し伸べられるよう、IFRCによって開発された方法に基づいて評価を実施するため、国内災害対応要員を訓練するべきである。迅速に出動でき、市町村当局による地域社会のニーズの評価を手伝うことのできる、よく訓練された評価チームが必要なのである。広域的な大規模災害でこれを実現するためには、十分な実力と準備態勢を備えた、市町村レベルでのボランティアが不可欠であり、体系的な訓練と組織によって、災害対応と有効な評価の能力を高めておく必要がある。そのため日赤は、訓練されたボランティア集団の強化と多様化を図り、その効果的な動員と展開のために有効な体制を整えなくてはならない。僻地や海岸地域でサイクロンによる被害が多発するバングラデシュでは、赤新月社が4,000 km以上の海岸線に沿った地域で3万5000人以上のボランティアを養成し、40年以上前から、被害評価やニーズに関する報告書を継続的かつ体系的に作成する方法を教えている。また彼らは、災害の接近をローテク手段によって人道研究ジャーナルVol. 1, 201267