「人道研究ジャーナル」創刊号

「人道研究ジャーナル」創刊号 page 70/216

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Journal of Humanitarian Studies Vol. 1, 2012住民に警告する役目を担い、救助と応急手当の資材を備えている。この体制は、長年にわたり日赤からの実質的な支援を受けてきたが、日本もそこから教訓を得ることができ....

Journal of Humanitarian Studies Vol. 1, 2012住民に警告する役目を担い、救助と応急手当の資材を備えている。この体制は、長年にわたり日赤からの実質的な支援を受けてきたが、日本もそこから教訓を得ることができると思われる。日本では、複雑で障害に弱いテクノロジーに頼っている面が大きいが、津波の発生時に被災地域の多くでは、それらが高齢者にとって適切でなく、うまく利用できないことが明白になった。災害教育や防災訓練を通じて、住民や災害管理担当者の防災意識を高めること、そして、避難に際してどのような種類の情報が必要であるかを見直すことが重要である。赤十字社・赤新月社が社会あるいは保健プログラムによって地域社会に根付き、信頼されている国々の多くでは、高齢者や障害者など、他の方法で接触することが難しい住民に情報を伝えるという重要な役割をボランティアが担っている。歴史上の災害に基づいて、世代を超えて防災文化を受け継いで行くことは、人々の理解を向上させる手段として非常に重要である。学校教育に加えて、ボランティアへの訓練と支援が十分であれば、地域社会のボランティアによる効果的な情報提供プログラムを実施することも可能であり、赤十字の医療施設において、それを実施することもできる。さらに、外国での災害の経験が示しているように、緊急時には、それまで赤十字とは無縁であった多くの人々が、熱心に援助を申し出るが、そのような援助を有効に実施するためには、組織的な枠組みが必要である。日本でも、全国から数十万人が、自主的にボランティアとして東北へ行った。そのため、災害時に新たなボランティアを管理する、有効なシステムが必要である。これを実現する方法のモデルは、たとえば米国赤十字に見出すことができる。災害時の新規ボランティアの急増に対処し、その効果的な展開を図るため、優れたシステムを築くことが必要である。心のケアの重要性どのような災害でも、被災者の多くは深い心の傷を負っており、子どもや高齢者などの弱者では、とくにそれが著しい。被災者は親族、友人、隣人、家を失い、自分の生活をコントロールできなくなったと感じているため、即座に心理的な応急手当を行うことの必要性は極めて大きい。被災者の一般的な反応は、悲しみ、怒り、不満感、恐怖、不信感などである。最初のショックの後、地域ぐるみで避難所に移ることを強いられた人々に対して、心のケアが必要であることは明らかである。津波の後、日赤の医療チームと心のケアチームは、緊急援助活動の一環として、心理的サポートを提供したが、被災者の多くは、非常に長い期間にわたる心理的サポートを必要とする。専門家による長期的な支援は、高所得国の多くでも非現実的あるいは実行不可能であるが、これまでの経験から、訓練を受けた地域ボランティアを動員することは可能である。北欧諸国をはじめとして、多くの国々の赤十字社には、有効に機能するモデルが存在している。IFRCは、手法の開発と経験の共有に関する情報センターをデンマーク赤十字内に設置している。日赤は、被災直後の心理的応急手当に加えて、復旧プログラムの一環として、ボランティアによる長期的な心理的サポートを個人と地域社会に提供する方法を検討するべきである。1994年にフェリー「エストニア」号が沈没した時には、850人以上が溺死あるいは低体温によって死亡し、家族と友人にスウェーデン赤十字から数年にわたって心理的サポートが提供された。2004年のスマトラ沖の津波では、他の心理社会的サポート提供者との間で、地域あるいは国レベルで密接な調整と協力を行うことが重要であり、望むらくは合同でアセスメントを実施すること68人道研究ジャーナルVol. 1, 2012