「人道研究ジャーナル」創刊号

「人道研究ジャーナル」創刊号 page 72/216

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Journal of Humanitarian Studies Vol. 1, 2012近くにわたる日本での私の経験によると、経験を積んだ技術的派遣団の調整担当者として、必要に応じて十分なコンサルティング能力を持ったIFRCの代表者を置き、ホスト国....

Journal of Humanitarian Studies Vol. 1, 2012近くにわたる日本での私の経験によると、経験を積んだ技術的派遣団の調整担当者として、必要に応じて十分なコンサルティング能力を持ったIFRCの代表者を置き、ホスト国の赤十字社の機構にしっかりと組み込むことが重要であると考えられる。国際派遣団は、無論、ホスト国側の職員を尊重しなくてはならず、そこに定着した業務実施基準や文化に沿って活動し、ベストプラクティスを体系的に共有しなくてはならない。国際的な大規模災害からの実地経験と専門能力を備え、運動の方針と基準を熟知した赤十字赤新月派遣団とスタッフは、自国で災害が発生した際にはかりしれない価値を発揮するであろう。緊急対応ユニットは、もっと柔軟性を高め、赤十字社の既存の組織体制や制度と一体化させるべきである。これによって、高所得国の赤十字社との活動にも不都合がなく、それらが保有する能力を補完し、その緊急対応計画に参画できるようにするべきである。津波の後、日赤にとって早急に必要であることがただちに明らかになった事項の1つは、国際メディアとのコミュニケーションや海外の資金提供者への報告に長けた派遣団の必要性であった。一般に、各国の赤十字社は、重要な災害情報を母国語と英語で国民、メディア、提携組織に伝達できるよう、十分なコミュニケーション能力を確保するべきである。日赤のような水準の高い有能な組織でさえ、この分野では緊急時に補強が必要であることを痛感した。その他には、家族間の連絡を回復させるために有効なシステムを整備すること、安否調査サービス、新しい技術の活用方法やソーシャルメディアの管理方法などについても、外部からの力が必要であると思われる。資金調達システム日赤は、国際的な資金援助を要請しなかったが、津波後に他の赤十字社や赤新月社から巨額の支援を受け、92ヵ国の赤十字社や組織からの総額は12億米ドル近くに達した。その他にも日本の国民から赤十字に37億米ドルが寄せられており、これは市町村から被災者への現金給付に充てられ、他の活動には使用できないものとされた。この方式については、見直しが必要であり、おそらく将来は、日赤がもっと柔軟に活動できるよう、変更されるべきであろう。日赤は、その誠実さと能力への信頼を裏付けるため、支援社に質の高い情報を提供し、視察や復旧計画、予算作成への参加を歓迎した。「国際的要請がない」場合の扱いについて、当時、合意されたモデルは存在しておらず、活動の過程で策定しなくてはならなかった。そのためIFRCは、各国の赤十字社が他の国の赤十字社から自主的な寄付を受ける際に適用される、運用の枠組みを策定するべきである。これは、援助をチャンネルする方法を定め、資金を運用する赤十字社に資金の使途を説明する責任を負わせるものとするべきである。運用の枠組みの策定では、既存の方針や手続きを考慮に入れ、日本の大震災や、ハリケーン「カトリーナ」、ニュージーランド、クライストチャーチでの地震といった類似災害の経験に基づき、今後どうすれば「要請がない」状況をうまく処理できるかを検討するべきである。この枠組みでは、IFRCの事務局における国際組織としての基本的な災害対応費用を、災害募金からの資金でまかなう方法をどうするかという問題にも取り組むべきである。現時点では、これは低所得国の被災者のために寄付された多国間支援資金に対する一定比率の徴収によって、すべて賄われているが、それは倫理的に疑問であり、連帯責任の原則に反しているように思われる。70人道研究ジャーナルVol. 1, 2012