「人道研究ジャーナル」創刊号

「人道研究ジャーナル」創刊号 page 77/216

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Journal of Humanitarian Studies Vol. 1, 2012意欲につながるというものである。今回の活動も、学生が今まで学んできたことを、被災地といういわば外の世界で実際に行動を起こし、この2つの結びつきにより、自分た....

Journal of Humanitarian Studies Vol. 1, 2012意欲につながるというものである。今回の活動も、学生が今まで学んできたことを、被災地といういわば外の世界で実際に行動を起こし、この2つの結びつきにより、自分たちの学んできたことの意味がさらに深く定着したのではないかと考える。学生に学習意欲を持たせることは、現状の看護教育の課題でもある。その意味で、サービス・ラーニングという方法は、効果的なのではないかと考える。この手法を用いる場合の重要な要素の1つとして、学習目標の明確化がある。サービス・ラーニングの活動がどのようにして学業につながるのかを明確にすることである。そして、2つ目には、実際のコミュニティに対しての貢献があること、3つ目には、学生が意思決定の段階で関わること、最後に学生が行った活動を通しての経験がどう自分の学業とつながっているかを考えさせる時間を設けることが必要であるとされている。今回の活動で、サービス・ラーニングを特に意識していたわけではない。しかし、活動に至るまでの経過や実際の活動場面を振り返ると、結果的にサービス・ラーニングといえる状況であった。さらに、この学習方法を効果的に活用する場合には、教員側の認識や準備が必要である。その中には、地域のサポートも必要であるとされている。今回の活動のように被災地で活動しているNGOとのつながりこそが、サービス・ラーニングを成功させる1つの重要な要素になっていたと考えられる。今後、学生の学習意欲を高めるために、看護教育の中でも検討していくべき教育手法だと考える。もう一つ今回の学びの中で重要だったのは、「こころのケア」の側面である。被災した子ども達は、しばしば、自分に起きたことについて上手く表現するのが難しい。しかし、活動の中で、意識していない時に「全部津波で流されちゃったんだよね。」などと発言する場面も見受けられた。このような時、学生は、どのようにその子どもに応えたらいいのかという戸惑いを見せていた。学生は日々の振り返りの中で、「どう応えたら良いのか」ということよりも、むしろその発言をありのままに受けとめながら接していくことや、子ども達と共に学んだり遊んだりすることが、今の子ども達に必要であること。そして、それらのことを通して、非日常から日常へと子ども達の生活が変化し、自分自身を取り戻していく過程を大切にして関わることこそがケアにつながることに気づくことができた。今まで、実習も含めて看護の学習を進めてきた4年生達にとって、病院という施設ではない外の世界(被災地)にも看護は確実に存在しているということを実感できた活動であった。2.赤十字の看護教育の理念と実践活動東日本大震災は、日本社会のシステムや人々の生活、そして価値観の転換をも求められるような大きな災害であった。この未曽有の災害の被災を受けた人々を思う時、かつて赤十字が誕生した時の光景とオーバーラップする。赤十字の発祥は、遠く19世紀の北イタリアまで遡る。イタリアの統一戦争である。当時、偶然そこを旅していたスイス人の青年アンリー・デュナンは、戦いの地ソルフェエリーノで、この世のものとは思えない惨状を目の当たりにした。痛みに喘ぐ多数の瀕死の傷病者を前に彼の心と身体は、応急救護活動という必然へと突き動かされていった。そして、デュナンは、この惨劇を二度と繰り返すことの無いよう、その思いを「ソルフェリーノの思い出」に託した。各国に平時から訓練を積み、準備の整った民間の救護団体を組織し、敵味方の差別なく救護することを提案した。さらに、その救護団体が戦場で安全に活動する為の国際的な取り決めについても提案した。この人道研究ジャーナルVol. 1, 201275