「人道研究ジャーナル」創刊号

「人道研究ジャーナル」創刊号 page 79/216

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Journal of Humanitarian Studies Vol. 1, 2012これからも社会が看護に期待するのは、一人ひとりの生命と尊厳を守り、確かで安全な技術のもと、苦痛を軽減し、安楽を提供できる看護であろう。そのような看護を提供で....

Journal of Humanitarian Studies Vol. 1, 2012これからも社会が看護に期待するのは、一人ひとりの生命と尊厳を守り、確かで安全な技術のもと、苦痛を軽減し、安楽を提供できる看護であろう。そのような看護を提供できる人材の育成のためには、「人道」の持つ普遍性の理解と同時に、この理念は個人が行動する上での拠り所となることや、日常生活活動の中での振り返りのための拠り所ともなることを伝え、より身近なものとして捉えていくことで、実践行動へ繋げていくことが肝要である。Ⅳ.おわりに被災地は瓦礫などが集められ、新しい道路の建設が進んでいたが、何もなくなってしまった町並みを目の当たりにし、大変ショックを受けた。しかし、スーパーなどが開店しており、子ども達が瓦礫のすぐ隣で野球をしていたり、少しずつ日常が戻りつつある気配も感じられた。子ども達は、震災の影響で夏休みが短い状態にあっても、もとの生活を取り戻し、遅れた学習を進めていかなければならない状況下にあった。そのような状況に対して何ができるのかを想像力を駆使して、学生達は「楽習会」を企画・開催した。学習の支援だけでなく、様々なレクリエーションも盛り込み、特に雪を運搬して行った雪合戦や雪だるま作りは、真夏の雪の登場で子ども達の大喜びな姿を見ることができた。また米国赤十字社とディズニーがコラボレーションしたポスターを寄贈し、その裏に子ども達に夢を書いてもらった。県外に仕事に出ている父親を思い、「早くお父さんに会いたい」と書く子どもがいた。明るく振る舞っている様子はあるものの、やはり生活環境が大きく変化してしまった子ども達への精神的な影響の大きさを感じた。しかし、「きたみのかんごだいがくにいきたい」と書いてくれた子どももいて、少なからず活動の意味があったのではないかと感じた。今回の5日間という短い活動では成果として、子ども達に何を残せたのかは今もまだわからないが、活動場所としていた小学校の校長先生から「子どもが楽しみにしているんですよ。」と、お言葉をいただいたり、子ども達からも「待ってたよ」「明日も来るね」との元気な声をもらい、学生達自身、「私達学生は微力。だけど無力ではない。」ということを実感していた。今後も継続して被災地ならびに子ども達とのつながりを持ち続けていきたい。今回の活動を通して、いつ身近で起きるかわからない災害時に迅速かつ的確に対応できるように、また、災害時に学生が主体的に自らの意思決定のもと、積極的に行動できるような教育体制を整えていくことが赤十字の看護大学としての使命であることを痛感した。陸前高田市と北海道とのつながりは始まったばかりである。今後も子ども達が休みとなる期間に継続して活動を実施していくことを計画している。最後に、東日本大震災による犠牲者の方々のご冥福と、被災地の一日も早い復興を心より祈念いたします。Ⅴ.参考文献1 )レズリー・ハーガート:基調講演「アメリカ合衆国におけるサービス・ラーニングの成果」,茨城大学地域総合研究所年報,3-16,2003.2)脇谷孔一:第4回日本赤十字看護学会学術集会テーマセッションⅡ赤十字の理念と看護管理「赤十字の理念「人道」の具現化をめざして」,日本赤十字看護学会誌,vol.4,No.1,26-27,2004.3)浦田喜久子:第6回日本赤十字看護学会学術集会シンポジウム今改めて問う赤十字とは「赤十字の看護の発展に向けて」,日本赤十字看護学会誌,Vol.6,No.1,16-19,2006.人道研究ジャーナルVol. 1, 201277