「人道研究ジャーナル」創刊号

「人道研究ジャーナル」創刊号 page 91/216

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Journal of Humanitarian Studies Vol. 1, 2012ですから、きちっと自己完結ができるような装備、住居も含めて。何かそういうものがあると、もう少し長期にでも滞在できる可能性も出てきます。赤十字の場合は、かなり....

Journal of Humanitarian Studies Vol. 1, 2012ですから、きちっと自己完結ができるような装備、住居も含めて。何かそういうものがあると、もう少し長期にでも滞在できる可能性も出てきます。赤十字の場合は、かなり自己完結という点では教育されていますので、まだまだ迷惑を掛けながらも、自分たちで食料を持参したりしていますが、ほかの組織では食事はどこにあるのかとか、どこに住むのかなど、そういうことも横行していたと聞いていますので、事前に教育が必要と思います。東浦:五十嵐局長、今回の救護というのは、いわゆる先進諸国の中で起きた救護として、アメリカのカトリーナとか、いくつかの先例はないわけじゃないですけれども、これだけ大規模なものというのは、近年まれなことだと思うんですね。連盟からは元連盟のヨーロッパ部長で、スウェーデン赤十字の国際部長を退職してまもないBjorn Ederが駐在したり、日頃支援を受けている社を含めて、相当多数の社から莫大な救援金が寄せられたり、政府レベルですが医療救助隊を受け入れたりとか、いろいろな支援がありました。日赤として、その総括といいましょうか、先進国における大規模災害から学んだことはどんなことでしょうか。まだ中間報告的なものだと思いますが、私の前任の連盟のアジア・太平洋部長で、スマトラ沖の津波災害ではモルジブの駐在代表、さらにジュネーブでスマトラ復興のまとめをしばらくしていたJerry Talbotも来て、中間評価を書いている最中だと思いますけれども、どんなことが考えられているのでしょうか。五十嵐:これは、まだ中間的評価報告書でありますが、一応、国際的な視点から見た評価というかたちで、80ページにわたる評価がでています。この評価の視点が大きく二つありまして、今、東浦教授からお話しされた先進国での災害、それも大規模、想定を超えたということがひとつです。特に、今回の場合、何回も言われていることですけれども、16年前に阪神・淡路の経験をして、そのときに先進国での地震としては相当の被災者が出たわけですが、今回の場合は、いわゆる地震によるというよりは、むしろ、この津波による被害というところが圧倒的に多くて、さらに、それにプラスして、この津波の関係で、福島の原子力発電所が大きく被災し、その放射能漏れによる被害が広域に及んだという点が二つ目です。このことは、ある面で複合災害といいますか、地震だけではなくて、津波、そして、原発の放射能漏れ、この3重の要因が、現地の人々に大きな被害を与えてしまったということです。これは、日本だけではなくて、いろいろな先進国で原発を抱えているようなところであれば、万が一、そういうことが起きないとは限らないということを、私たちが現実の問題として目の当たりにしたという面では、大きな教訓、あるいは経験を学んだ大災害だったと思っております。全体で、評価の最後に20の提言があるのですが、それを要約した13の提言もあります。そのうち、日本赤十字社に提言されていた部分というのが幾つかあります。特に、災害というのは、どこにインパクト、衝撃が走るかというと、弱いところに走るんですね。目に見えないところで一番弱いところに大きな影響、衝撃が出てくるということですね。日赤は、計画されて、あるいは準備されてきたこと、あるいは災害救助法等で役割として担ってきたことはよくやったんですよ。そこは、本当によくやったということでやっぱり評価しています。一方で、じゃあ、その準備していないこと、あるいは考えていなかったこと、法律その他で整備されていないことに関しては、災害が起こればその場で考えていかざるを得ないわけです。そう人道研究ジャーナルVol. 1, 201289