「人道研究ジャーナル」Vol.2

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「人道研究ジャーナル」Vol.2

The Journal of Humanitarian Studies Vol. 2, 2013社会、金融、物的、自然・政治的資産に基づく潜在能力(capacity)あるいは実務能力(capability)をいう。レジリエンス・アプローチは、人々やコミュニティが常に潜在能力を有することを認める。レジリエンス強化の目的は困難な状況からの影響に耐えるための、この潜在能力を高めることである。?レジリエンスは個人、コミュニティ、組織または国家の能力として捉えることができる。レジリエンスに対する包括的なアプローチは、それらの異なるレベルの相互関連性及び地域的、世界的な繋がりへの理解が必要とされる。赤十字・赤新月社はコミュニティレベルから分析を開始することが多く、コミュニティのレジリエンスに焦点を当てる。包括的な分析には、個人及び世帯、そしてコミュニティにおけるそれらのレジリエンスを理解することが必要となる。また、外的環境及び個人とコミュニティのレジリエンスに与えるその影響も理解しなければならない。レジリエンス強化のための介入は異なるレベルでなされ、相互に補強し合う。その一例としては、国家レベルでは平等な公衆衛生政策、コミュニティレベルでは改善された廃棄物管理へのアクセス、そして個人レベルではワクチンの提供に対する並行したアドボカシー活動である。個人やコミュニティ、組織そして国家が、脆弱性の根本的要因をはじめ、災害及び危機的状況に晒されることを認識することは、定義に関するもうひとつの重要な側面である。これらの分類は以下のように定義される。?災害及び危機的状況とは、生死に直結する直接の原因または差し迫った脅威のことである。例えば、自然災害、病気の蔓延、紛争の発生、そして食糧価格の急激な変動等である。?脆弱性の根本的要因とは、開発の潜在性を弱め、脆弱性を高めるような長期的な要因や傾向を意味する。例えば、天然資源の衰退や人口の変化、気候変動の影響、非伝染性の病気、経済的衰退等である。脆弱性の根本的要因は、さらに以下のように中間要因と根本的要因に分類化できる。? 中間要因は、人々のウェルネスや開発の機会に影響を与える。通常、中間要因は人々が不足または必要としているものを指す。例えば、基本的サービスへのアクセスや技術の不足、生活のための生産力の低さ、そして女性や子どもへの不十分なケア等である。? 根本的要因は、特に社会制度や政治経済構造、そして環境課題等の低開発の構造的基盤に関連している。ガバナンスの弱さ(政治的側面)、疎外化や社会的排除(社会的側面)、貿易条件(経済的側面)、または環境容量(環境的側面)等の中間要因がなぜ存在するのかに焦点を当てる。? 脆弱性の中間要因と根本的要因の多くは相互依存の関係にある。例えば、飢饉や武力紛争のリスクは慢性的な天然資源の衰退により上昇する。同様に、気候変動に適応し、移民管理を適切に行うことで、災害や紛争のリスク低減に繋がりうる。根本的要因に対応しなければ、各国赤十字社は差し迫った脅威に対する脆弱性に対応することが不可能であることが多い。これは、脆弱性の性質によるものである。この定義は、困難な状況による影響に対する予測、影響の低減、対処及び影響からの回復にかかる異なる能力を示している。そのため、レジリエンスとは負の「出来事」に即応する能力のみならず、むしろ困難な状況の発生前から発生後における肯定的な適応プロセスである。開発の恩恵をより長期的に保護し、災害や紛争原因が開発を通じて劇的に削減するための試みが、レジリエンス・アプローチの中核である。国際赤十字・赤新月社連盟(IFRC)にとって、このことは、予防、救援、そして復興業務の重なり合う性質や、それらを繋ぎ、開発をさらに進めることを強調する。また、レジリエンスは長期的な展望を躊躇することなく、困難な状況に対処することが定義の本質である。このことは、レジリエンスと最低限の生存状態を明確に区別する。レジリエンスは単に脆弱な状態に戻るのではなく、「回復する」あるいは「前進する」能力である。レジリエンスの強化は変化および移行のための機会の窓と関連し、多くの場合、騒乱状態の後に開かれるものである。8人道研究ジャーナルVol. 2, 2013