「人道研究ジャーナル」Vol.2

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「人道研究ジャーナル」Vol.2

The Journal of Humanitarian Studies Vol. 2, 2013フィンランドにおいては、「フィンランド赤十字社法(Act on the Finnish Red Cross)」により、「フィンランド赤十字社は・・・フィンランド国により認められ、公法により規定される団体であり、その活動はジュネーブ四条約に基礎をおく」と定められている(45)。フィンランド赤十字社については、ローザスの詳細な研究があるが、それによると、フィンランドの行政法はドイツ法に影響をうけ、国家あるいは地方自治体の行政の枠外にある公的機能を果たす団体および人を総称する「間接行政(indirect public administration)」の概念が存在するが、フィンランド赤十字社は間接行政に分類されている(46)。V.政府の人道分野における補助機関としての日本赤十字社1.戦前における日本赤十字社我が国においては、日本赤十字社の法的地位が第二次世界大戦をはさんで大きく変化した。まず、戦前においては、日本赤十字社条例(勅令第223号)が1901(明治34)年12月に定められ、陸海軍の戦時衛生勤務を幇助することが日本赤十字社の目的となった(47)。日本赤十字社条例は、のちに日本赤十字社令と名称を改め、条文も変化するが、日本赤十字社の目的は変化せず、他の事業が戦時救護の他に目的として加わることもなかった。憲法をはじめとした法令が編纂されるなか、日本赤十字社はその法的根拠を法律に求めた。1898(明治31)年に民法が施行されると、日本赤十字社は社団法人として登記し、法人となった(48)。しかし陸海軍の衛生事業に従事することが目的であり、それを「純然タル公務」とする日本赤十字社は、特別な法律による法人となることを政府に要求した(49)。これにたいして政府は、民法における社団法人であることで不都合はなく、特別な法律は不要とする結論にいたったが、日本赤十字社は陸軍省に勅令の制定を求め、1901年に日本赤十字社条例として実現するに至った(50)。同条例第1条は以下のように定め、日本赤十字社の陸海軍の補助機関としての役割を明白に規定した。日本赤十字社ハ陸軍大臣海軍大臣ノ指定スル範囲内ニ於テ陸海軍ノ戦時衛生勤務ヲ幇助スル(51)コトヲ得そして、条例設立以降、日露戦争、第一次世界大戦、シベリア出兵、日中戦争、第二次世界大戦などの戦争・事変において、日本赤十字社は戦時救護事業を行った。2.戦後における日本赤十字社(1)日本赤十字社法の制定戦後においては、1947(昭和22)年に日本赤十字社令が廃止され、1949(昭和27)年に日本赤十字社法が定められた。日本赤十字社法は、日本赤十字社を法人とし(第4条第1項)、厚生労働大臣を監督者としている(第36条、37条)。また第1条は日本赤十字社の目的を「人道的任務を行うこと」と定めている。日本赤十字社の事業については、「赤十字に関する諸条約に基く業務に従事すること」(第27条第1項第1号)よりジュネーブ条約に基づく戦時救護の可能性は排除されてはいないが、災害救護(第2号)および「常時、健康の増進、疾病の予防、苦痛の軽減その他社会奉仕のために必要な事業」(第3号)が事業として定められ、現実にも戦争を放棄した国家の赤十字社として日本赤十字社は、これらの活動に戦後は専念してきた。さらに、第33条は国の救護の委託を定め、第1項は「国は、赤十字に関する諸条約に基く国の業務及び非常災害時における国の行う救護に関する業務を日本赤十字社に委託することができる」としている。(2)日本国憲法の「公の支配」と日本赤十字社日本赤十字社は、「公の支配」に属している。「公の支配」については、補助金の申請において日本赤十字社内部でも問題になり、1962(昭和37)年に埼玉県知事が当時の厚生省にたいして照会、厚生省は日本赤十字社が「公の支配」に属していると回答した(52)。「公の支配」とはなんであろうか。日本国憲法第98条は以下のとおり定める。公金その他の公の財産は、宗教上の組織若しくは団体の使用、私益若しくは維持のため、又100人道研究ジャーナルVol. 2, 2013