「人道研究ジャーナル」Vol.2

「人道研究ジャーナル」Vol.2 page 104/276

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「人道研究ジャーナル」Vol.2

The Journal of Humanitarian Studies Vol. 2, 2013言的に述べたものである(59)。災害対策基本法は防災についての基本法であるが、日本赤十字社は「指定公共機関」とされ(第2条第4号)、第6条により指定公共機関は防災計画の作成および実施をするとともに、「この法律の規定による国、都道府県及び市町村の防災計画の作成及び実施が円滑に行なわれるように、その業務について、当該都道府県又は市町村に対し、協力する責務」がある。さらに、第80条第1項は「災害が発生し、又はまさに発生しようとしているとき」、指定公共機関は「応急措置をすみやかに実施」することを定めている。ⅱ.有事に関する法令日本赤十字社は戦後、平時事業に特化し、武力紛争などの有事の際における活動は、実際に行ったことはなく、また、法令上もそのような活動を裏付けるものはなかった。しかし、2000年代に北朝鮮との関係が緊張し、一連の有事法制が制定された。まず、「武力攻撃事態等における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全確保に関する法律」(以下、事態対処法)第2条第6号は日本赤十字社を「指定公共機関」として定め、第6条により「指定公共機関は、国及び地方公共団体その他の機関と相互に協力し、武力攻撃事態等への対処に関し、その業務について、必要な措置を実施する責務を有する。」さらに、有事に関する法律のもう一つの柱である「武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律」(以下、国民保護法)は、まず、事態対処法をうけて、日本赤十字社を含む指定公共機関には「その業務について、国民の保護のための措置を実施する責務」がある(第3条第3項)と規定している。また、第136条により、「病院その他の医療機関である指定公共機関及び指定地方公共機関は(中略)医療を確保するため必要な措置を講じなければならない。」と定められているため、病院を有する日本赤十字社は同条により医療の確保が求められる。さらに、国民保護法第77条により、日本赤十字社は「都道府県知事が行う救援に協力しなければならない」。さらに、同法96条は外国人の安否調査に関して、日本赤十字社は情報収集するとともに、安否の照会にたいしては「速やかに回答しなければならない」と定めている。ⅲ.医療および血液事業に関する法令日本赤十字社は2012年12月末現在、92の赤十字病院を有するが、日本赤十字社は公的医療機関として位置づけられている(60)。そして、医療法により公的医療機関は「都道府県が定めた施策の実施に協力しなければならない」と定められている(31条)。血液事業については、長らく閣議決定がその根拠となっていたが、2003年に「安全な血液製剤の安定供給の確保等に関する法律」が制定され、日本赤十字社の血液事業の法的な根拠となった(61)。この法律には国(第4条)、地方公共団体(第5条)、採血事業者(第6条)、血液製剤の製造販売業者等(第7条)の責務が各々規定されている。日本赤十字社については特別に明記されてはいないが、事実上独占的に血液事業を国内で行っているのは日本赤十字社であり、血液採決事業者および製造販売業者としての役割を一手に担っているといえる。VI.考察政府の人道分野における補助機関としての赤十字社について、まず、異論がないことは、軍隊の衛生部隊の補助として赤十字社が活動する場合であろう。これは、ジュネーブ第一および第二条約において規定され、諸外国の例をみても明白なように、国内法に取り入れられている。この戦時における軍隊の補助機関としての赤十字社は、国際法および各国の国内法上、共通したルールとなっているといえよう。しかし上述のように、戦後ジュネーブ条約上の伝統的な衛生部隊の補助機関としての役割を実際に行っている赤十字社は皆無である。かわって、医療、保健衛生の分野で、赤十字社はその属する国において補助的な役割を果たしてきた。これは、条約上、特に規定はないが、赤十字社が現実の問題に対応するなかで、平時における医療、保健衛生などの事業が重視されるに至ったためである。この変化は、用語の使用方法にもあらわれ102人道研究ジャーナルVol. 2, 2013