「人道研究ジャーナル」Vol.2

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The Journal of Humanitarian Studies Vol. 2, 2013研究ノート思想普及の軌跡~国際人道法の普及義務規定の発展史~Retrospective view of disseminating the idea of humanity~ The history of the development of International Humanitarian Law dissemination clause ~齊藤1彰彦【問題の所在】(以下、略称として「GI~GIV:1949年のジュネー領域主権の争奪や核実験への懸念を巡る東アジアブ第一~第四条約」「API~II:1977年の第一、第二情勢の緊迫化、また、昨今のシリアやアルジェリア追加議定書」を用いる)等の国外紛争・騒擾事態における日本人犠牲者の発生など、永らく平和を享受してきた日本にとっても【普及義務規定の萌芽期】紛争の現実と無縁でいることは難しい時代になった。紛争下における人間の生命と尊厳の保護を目的とそうした時代に生きる我々にとって、紛争下におけする国際人道法は、戦闘員の権利義務や戦闘手段・る人間の生命と尊厳の保護を目的とする国際人道法方法の規制に関するハーグ法と、紛争犠牲者の人道の知識を備えておくことは有益なものだと思われる。的待遇に関するジュネーブ法から構成され、それぞこれは潜在的な紛争犠牲者としての一般市民のみなれ別個に発展してきた法規範を内包する呼称としてらず、もはや珍しくはない武器を取る文民を含む戦用いられる。闘員、そして、将来社会の担い手となる若者たちにハーグ法の特質は、1868年のサンクト・ペテルブとっても同様のことが言える。換言すれば、「生と死ルグ宣言において「戦争における唯一の正当な目的に関わる」国際人道法の実現のためには、まず何よは敵の軍隊を弱体化することであり、すでに戦闘能りそのルールの存在と機能がこうした人々に対して力を奪われた者の苦痛を無益に増大させる兵器の使広く理解されていることが不可欠の前提であり、そ用は人道の法に反する」ことを確認した点にその萌のための普及が欠かせない。芽を見ることができる。しかし、ハーグ法の最盛期しかし、その普及は誰が、何を、どう行うべきか。とも言える1899年及び1907年のハーグ平和会議で普及の法的根拠は、国際人道法を構成する最も中核採択されたいずれの条約、宣言等においてもその普的な1949年の四つのジュネーブ条約と1977年の二及を義務付ける規定は置かれなかった。唯一、1880つの追加議定書における、締約国に対し平時から条年に国際法学会が採択した「陸戦の法規慣例」(オッ約の本文を広く普及することを義務付ける規定(以クスフォード提要)の前文が、「君主はこの新たな法下、「普及義務規定」という)に見ることができる一を公布するだけでは十分ではない。戦争が宣言され方、その具体的な実施方法等の詳細を条約は明らかたとき、交戦国の大義を守るために武器を取る人々にしていない。しかし、国際人道法の目的と理念や、に対して、命令を実行する際に付随する特別な権利その発展に多大な貢献を果たしてきた赤十字の歩みと義務を完全に植え付けておくために、すべての人々をたどるとき、はたしてこの義務が条約本文の機械に広くこの法を知らしめることが不可欠である」と的な周知のみで果たされると言えるだろうか。本稿し、はじめて普及の必要性を確認している。また、では国際人道法の普及義務規定の発展史をたどり、普及義務ではないが、1907年の陸戦の法規慣例に関普及の営みにいかなる意義が込められてきたのか、する条約第1条では、「軍隊に対する訓令」として「締その現代に至るまでの俯瞰図を明らかにすることで、約国ハ、其ノ陸軍軍隊ニ対シ、本条約ニ付属スル陸その手がかりを模索してみたい。戦ノ法規慣例ニ関スル規則ニ適合スル訓令ヲ発スヘ1日本赤十字社救護・福祉部人道研究ジャーナルVol. 2, 2013107