「人道研究ジャーナル」Vol.2

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「人道研究ジャーナル」Vol.2

The Journal of Humanitarian Studies Vol. 2, 2013インテグレーターとしてのレジリエンス人間のレジリエンスの概念(定義からも分かるとおり、日本国内および日本の国際人道・開発支援により適合・促進されてきた「人間の安全保障」の概念と強く関連性を持つ(1))の利点‐また同時に課題でもある‐は、内外からの衝撃に耐えるための人間の能力に対する全体的な視野を与える。我々は安全やウェルネスの意味について、保健、経済状況、精神的安定および幸福状態、そして家族や友人、社会保障、保健インフラ、シェルター、時宜を得た情報、情報の質等を通じた様々なセイフティー・ネット等、実生活を通じて理解している。いずれの要素も重要であり、世界の様々な場所や異なる社会集団によりその重要性は異なる。家族支援制度や個人と集団の価値の対立、国家経済開発のレベルなど、その他多くの要因が潜在的な内外からの衝撃に対する人々の脆弱性を決定する役割を果たしている。また、これらの衝撃は、単なる自然災害や人為的災害ではない(紛争はその不可分の一部であり、例えば今、まさにアフリカ北部やシリアでは紛争の結果として人々の脆弱性が急激に高まっていることに留意すべきである)。経済危機や失業の増加、また多くの先進国において中間層と自覚する人々の多くの脱落は、必ずしも飢餓の原因とはならない。EU諸国にみられるように、その多くは現在深刻な経済危機の影響を受けているにもかかわらず、依然として強靭な社会のセイフティー・ネットが存在するためである。しかし、困難な時期を乗り越えるためには、はっきりしたものではないが、重要かつ痛みを伴う人間の尊厳の損失、不況、抵抗する能力の損失をもたらす。結論として、レジリエンスとは複合的であり、人間の生を統合的に捉え、文脈に応じて支援や介入が必要な分野を見出すことを可能とする。スペインやギリシャの若者にとって最も重要なことは職を見つけることであろう(それらの国では厳しい経済危機のために50%以上の若者が失業状態にある)。市場暴落により破産した起業家にとっては、滅入った心理状況を乗り越えるための精神的支援かもしれない。アフリカのサヘル地域の図1.レジリエンスを強化するための介入は(a)開発を保護するために、脆弱性の根本的な原因に対処すること、(b)災害やクライシスによってレジリエンスが急激に落ち込むことを弱めたり、緩和すること、さらに(c)困難な状況から復帰する力を高めることを目的としている。レジリエンス・レベルクリティカルなレジリエンス・レベルレジリエンスの強化救護早期復興復興長期のレジリエンスと対策事業(開発的)長期のレジリエンスと対策事業(開発的)時間脆弱性の根本的な原因災害もしくはクライシス介入介入が実施された際のレジリエンスこの図は国際赤十字・赤新月社連盟が出版した“The Road to resilience / Bridging relief and development for amore sustainable future”(2012年6月)所収のものである。人道研究ジャーナルVol. 2, 20139