「人道研究ジャーナル」Vol.2

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「人道研究ジャーナル」Vol.2

The Journal of Humanitarian Studies Vol. 2, 2013遊牧民にとっては、日常的に欠乏している食糧や水であろう。そして、干ばつ期間中の食糧配布ではなく、長期的な解決を提供する支援である。フィリピン・ミンダナオのコミュニティにとって最も重要なことは、台風や火山噴火、土砂崩れが毎年発生するため、早告警戒システムと適切な避難計画及び避難所であろう。日本の地震警報システムおよび耐震建築は、これまでも人命が救われてきたことからもレジリエンス構築の完璧な例といえる。しかし、自然災害予防システムは、それ自体が重要であると同時に、「絶対にあきらめない」という人々の考えがなければ、どんなに外部からの衝撃が大きくとも機能しない。それはレジリエンスを構築する上で最も難しい要素であろう。なぜなら、世代を超えた取り組みが必要となるからである。では、以上のことを念頭に、レジリエンス構築における赤十字・赤新月社の「ニッチ」とは何であるか。どのようにレジリエンスを強化するかその答えはおよそ単純である。すなわち、特定のコミュニティまたは集団にとって、レジリエンスのどの要素が最も重要であり脆弱であるか、そして、他者と協力しその特定のセクターを「ターゲット」とするかであり、パートナーシップは重要な言葉である。それら多くのセクターについては、赤十字・赤新月社がこれまでに専門としてきた範囲外である。例えば、各国または欧州連合において最も重要な脆弱性は銀行取引と関連しており、またそれにより経済危機がもたらされることは間違いない。EUおよび関係国政府は政策導入や誘引強化の取り組みに数カ月を費やし、危機的状況を乗り越えるための経済規制を実施し、徐々にではあるが着実にその結果を具体化する。しかし、中央銀行および政治家がこれらの制度的解決の開発と導入を行う一方で、ヨーロッパにおいて、各国赤十字社の多くはその危機的状況からの影響を最も被る人々の、それらの衝撃に対するレジリエンス(および抵抗力)構築の支援を行う(2)。このような介入は、差し迫ったニーズに対応する必要があるが、効果的であるためには長期的展望を持たなければならない。アジアにおける2005年の津波災害以降、各国政府やIFRCなどの各機関により採用された共通のアプローチは、介入が「よりよい状況を取り戻す」べきであるということである。そのため、各国赤十字社(日本赤十字社はその一社である)は、住居やインフラの再建等の活動と並行して、インドネシア・アチェおよびスリランカ北部および北東部のほとんどの漁業コミュニティの生計構築を実施した。以下は、IFRCがこれまでに挙げたレジリエンスを有するコミュニティの特徴である(3)。レジリエンスを有するコミュニティとは:1.情報が行き届いた健全なコミュニティであり、リスクの評価、管理及び監視する能力を有し、新しい技術を学び過去の経験に蓄積させることができる。2.組織化されたコミュニティであり、問題を認識し、優先事項と行動を定める能力を有する。3.リスク低減のための地域の開発政策に従事するコミュニティである。4.連結したコミュニティであり、幅広い支援環境の提供や、必要に応じた物資やサービスの提供を行う外部のアクターと関係を有する。5.インフラおよびサービスを有するコミュニティであり、気候変動などを緩和する強固なシステムを有し、そのシステムを維持、改善、回復することができる。6.経済的機会を有するコミュニティであり、多様な雇用機会、収入および財政サービスを有し、柔軟でリソースに富み、不確定事項を受け入れ、変化に(積極的に)対応する潜在能力を有する。7.天然資源管理を行うことができるコミュニティであり、資源価値を理解し、それらを保護および拡充、維持することができる。10人道研究ジャーナルVol. 2, 2013