「人道研究ジャーナル」Vol.2 page 123/276

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「人道研究ジャーナル」Vol.2

The Journal of Humanitarian Studies Vol. 2, 2013ナイジェリア・ラゴス州の保健センターにおける産褥管理の実態調査Research on Postpartum and Neonatal Care in PHC in Lagos State, Nigeria束田吉子1、鈴井江三子2、加瀬文彦3、古閑純子4、長尾光城5 6、大橋一友要旨本研究は、ナイジェリアのラゴス州の保健センター（PHC）に勤務する現任助産師を対象にした産褥管理の実態調査である。調査した産褥管理の内容はPHCにおける分娩2時間後から、退院後に母児が再びPHCにおいて産後健康診査(以下産後健診)を受けるまでの間に実施されるケアである。調査方法はPHCに勤務する助産師を対象にした聞き取り調査、産後健診の参与観察、母親への聞き取り調査である。その結果、PHCにおいては、通常産後24時間で退院し、その後の産後健診は6週目が最も多く、予防注射と同時に産後健診を受けていた。産後健診の診察内容は、母体側では子宮の復古状態、悪露の色、量などの確認が行われていた。新生児側では皮膚の色や健康状態の確認が行われていたが、体重と授乳の管理は殆ど実施されていなかった。また、産後24時間で退院した後、産褥6週間目までは助産師による継続した産褥管理は実施できていなかった。産後の床上げの期間の手伝いは2か月間が最も多く、約半数が実母らの支援があったが、半数は夫しかいなかった。乳幼児死亡のなかで最も多い死亡割合を占めると言われる早期新生児期の管理がほとんど実施できていないことから、退院後1週間以内に、母児に対する助産師からの産褥管理の必要性が示唆された。キーワード：ナイジェリア、ラゴス州、助産師、PHC、産褥管理AbstractThis research describes postpartum care by midwives ata Primary Health Center (PHC) in Lagos State, Nigeria,covering the period from two hours after childbirthup to mother and child’s next visit to the neonataland maternal clinic for follow-up care. Research wasconducted through interviews with midwives andmothers and observation of the clinic. Mothers wereusually discharged from the PHC after 24 hours andcame for follow-up care and immunizations aftersix weeks. At the clinic, mothers were examined forcondition of the uterus, and color and quantity ofthe lochia. Babies were monitored for skin color andgeneral health, but little weighing or breast feedingmanagement was conducted. Continuous postpartumcare by midwives for 6 weeks after childbirth was notprovided. About half the mothers had help from theirown mothers postpartum, mostly for two months, buthalf had no one to help except their husbands. With solittle care in the immediate postpartum period whenchild mortality is most elevated, findings pointed tothe need for neonatal and postpartum care by midwiveswithin one week after discharge.Key words: Nigeria, Lagos State, midwife, PrimaryHealth Center, postpartum and neonatal care緒言ナイジェリアはサハラ以南のアフリカに位置し、アフリカで最も人口が多く膨大な石油産油国でもある。しかし、極端な貧富の差が拡大し、半数の国民は医療を身近に利用できない(1)。その結果、妊産婦死亡と乳幼児死亡は世界で最も悪い数値を示す国の1つとなっている。その理由として、5歳未満の死亡率に影響を与える要因は部族間に相違があり、出産前の医療の質の相違、社会・経済的特性（母親の学歴等）、母親の年齢や出産間隔等も影響を与えている(2)。また，1日本赤十字国際人道研究センター・日本赤十字看護大学2兵庫医療大学3千葉県庁総合企画部国際課（元JICA長期専門家）4 JICA長期専門家56川崎医療福祉大学大阪大学人道研究ジャーナルVol. 2, 2013121