「人道研究ジャーナル」Vol.2

「人道研究ジャーナル」Vol.2 page 124/276

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「人道研究ジャーナル」Vol.2

The Journal of Humanitarian Studies Vol. 2, 2013妊婦管理の欠如,若年の母親,初産,母体の栄養不良,低所得社会経済的階級,妊娠高血圧症候群,母体感染症(マラリア、尿路感染症,HIV)等も胎児発育遅延を誘発し(3)要因となっていると指摘されている。2000年に国連ミレニアム・サミットで採択された8つの開発目標の中で、第4番目の幼児死亡率の削減、第5番目の妊産婦の健康状態の改善は当国においても最重要促進課題である。特に、乳幼児死亡率の削減では2015年までに5歳未満の死亡率を1990年の水準の3分の1に削減すること、妊産婦の健康改善は、2015年までに妊産婦死亡率を1990年の水準の4分の1に削減することを目標としている。2010年世界サミットによる成果文書ではMillennium DevelopmentGoals; (MDGs)の成果によると5歳未満の乳幼児死亡率は減少傾向を示しており、1990年に1,260万人であった乳幼児死亡率は、2008年には880万人と大きく減少したことが報告されている。特に北アフリカ、東アジア、西アジア、中南米・カリブ海は大きく改善されている。しかし、幼児死亡率が最も高いのはサハラ以南のアフリカであり、6人に1人が5歳未満で亡くなっている(4)。なかでも、早期新生児期の死亡が乳幼児死亡の約4割強を占めるという(5)。ナイジェリア政府は、2010-2015年国家保健開発計画を策定し2015年までに5歳未満の死亡率1000人対、母親の死亡率を136人/10万人対にする指標を設定しているが、現状では、2008年のベースライン調査時から改善されていない(6)。また、ラゴス州での出産場所は、個人病院37.3%,伝統的産婆(Traditional Birth Attendants;以下TBA)25.5%であり,公的出産施設であるPHC(Primary Health Center;以下PHC)は僅か15.7%であるとの報告がある。その理由は「不定期な診察」31.4%,「質の悪い医療サービス」24.3%,「高い料金」19.2%であった。PHCで出産をした母親のなかで産後の健診を受けた人は4.9%であったことから(7)、産後の管理が不十分であると考えられる。そこで本研究では、独立行政法人国際協力機構(Japan International Cooperation Agency :以下JICA)のナイジェリア、ラゴス州母子健康強化プロジェクトが上位目標達成の指標としている「ラゴス州における母親、乳幼児死亡率の減少」について状況を把握するため、対象となっている15か所のPHCを対象に、助産師が提供している産褥管理の実態を明らかにし、早期新生児期の死亡の改善に向けた取り組みを考察することを目的とした。研究目的PHCに勤務する助産師が産後24時間以内に実施している産褥管理について、更に分娩第4期以降から産後健診までの間の産褥管理の内容を調査した。また、産後健診の内容についても明らかにした(表を参照)。調査方法はPHC15施設の助産師を対象にした聞き取り調査と、そのうちの2施設における産後健診の参与観察を行い、これらの調査結果をもとに早期新生児期の死亡改善に向けた取り組みを考察することを目的とした。研究方法1.調査場所と対象者:助産師を対象にした産褥管理に関する聞き取り調査は15施設に勤務する助産師で調査に同意した助産師を対象に行った。一方、母親を対象にした産後健診の参与観察は、15施設のなかで調査者が滞在する期間中に産後健診が実施された2施設のPHCで、同意を得られた母親に対して行った。母親への手伝いに関する聞き取り調査は、上記の母親を含む25人の母親を対象に行った。2.調査方法:産後2時間以降から退院までの産後24時間までに関する産褥管理は、助産師を対象にした聞き取り調査を行った。産後健診に関する診察内容は、表に示す項目に沿って参与観察を行った。産後の手伝いの有無は、母親への聞き取り調査を行った。3.調査内容:1)産後2時間から退院までの24時間は、母児の観察項目と助産師のケア、及び保健指導であった。2)産後健診の診察内容は表に示す通り、母体側では乳房管理、子宮復古の観察(子宮底、子宮の収縮状態、悪露の色、量)と診察方法、産後の手伝いの有無と期間であった。新生児側では体重と授乳管理を中心とした診察内容であった。これらの項目について、どの程度実施されているのかを調査した。4.調査期間:平成23年12月8日~12月30日5.倫理的配慮:プロジェクトのフォローアップの一環としてPHCの施設長に調査の内容を説明した後、母親へ対し調査を行った。その際、母親への説明はPHCの担当助産師から調査内容の概要を説122人道研究ジャーナルVol. 2, 2013