「人道研究ジャーナル」Vol.2

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「人道研究ジャーナル」Vol.2

The Journal of Humanitarian Studies Vol. 2, 2013の予防注射を受けるように指導するためであり、この際に、母親に対しても産後健診を受けるように説明していた。なお、5種混合になったのは、2012年5月からである。産後健診の診察内容は、全例に母体側では子宮の復古状態、悪露の色、量などの確認が行われていた。新生児側では皮膚の色や健康状態の確認は行われていたが、体重や授乳の管理は殆ど実施されていなかった。また、黄疸の有無や神経反射なども観察されていなかった。産後健診をした結果、母児共に順調であったのは6人であり、それ以外は、母体側として出血2人、カンジダ症2人、高熱とカンジダ症1人であった。新生児側として、授乳不足による体重増加の不良1人、湿疹1人、乳房発赤・腫脹1人であった。体重増加の不良は、調査者が体重測定を促すことにより分かったことであった。さらに、退院後、産後健診に来院するまでの間は、助産師による継続した産褥管理も実施できていなかった。2)聞き取り調査産後の床上げの期間について尋ねたところ、半数以上の母親は3か月と答えた。また、退院後、産後の手伝いがいる人14人(56.0%)、特にいない人11人(44.0%)であった。いると回答した14人のうち、2週間以内が2人、残りの12人は2週間以上で、2か月間が最も多く5人、3か月が2人、1か月が1人、5か月が1人、他の3人は、妹らとの同居であった。産後の手伝いに来る期間は、2か月が最も多かった。手伝いがいる人14人の内訳は、実母が5人、妹が5人、義母が2人、義妹が1人、メイドが1人であった。産後の手伝いは、10人(71.4%)が、母親側の身内であった。一方、特にいないと回答した11人のうち、初産婦は3人であり、残りの8人は2人目以上の出産であった。特に5人目の出産者が1人、4人目の出産者が2人、3人目の出産者が1人含まれていた。上記25人のうち、産後の体調不良を訴えた者は、3人であり、うち2人は産後の手伝いなしと回答した母親であった。考察1.予防注射が中心の産後1か月健診先行研究において早期新生児期の死亡は乳幼児死亡の約4割を占めると報告されている。しかし、本調査結果から、胎外生活への適応期間として観察が重要とされる出生直後から1週間以内の、早期新生児に対する管理は殆ど手つかずの状態であることが明らかになった。退院後、初めて新生児が産後の健診を受けるのは生後6週間目の予防注射の時であることが分かった。出生後は24時間で自宅に帰るため、生理的体重減少の幅が正常の範囲内であるのか、授乳量は不足していないか、黄疸の程度はどうであるのかなど、基本的な早期新生児期の変化を観察、把握し、必要に応じた処置を提供しないために、それが原因で比較的早い段階で死に至るのではないかと考えられた。よって、退院時に母親に対して新生児の生理的変化に関する理解を促すことはもちろんであるが、夫や実母・姑等、産後の支援を行う家族に対しても同様な保健指導を行う必要があると考える。また、助産師は人的資源が不足しているからという理由で、産後の継続観察を放置するのではなく、電話による家庭訪問をする、またはコミュニティ・ヘルス・オフィサー(PHCにおける保健分野の住民への窓口、また、患者が助産師の診察を受ける前に血圧、体重などを測り記録をする。)、あるいは地区の保健委員(ボランティア)らと協力して家庭訪問をするなど、地域の人的資源の活用を積極的に行う必要がある。そうすることで、早期新生児期の死亡改善に向けた取り組みが強化されると考える。2.産後の母体回復に向けた家庭状況の把握の必要性産後の床上げ期間は3カ月と認識している母親がほとんどであり、その間は家事や育児の支援を実母または姑が行うのが一般的であった。しかし、約半数は産後の手伝いを確保できていたが、残りの半数は夫のみが手伝いであると回答していた。通常、夫は日中に仕事をするため、その間の家事と育児は退院後すぐに褥婦が行う必要がある。体力および子宮の復古や産道の創部が十分に癒えていない状況であったとしても、買い物や料理、洗濯に加えて新生児の世話をしないといけない。日本の生活環境とは随分異なるためにその労働量は過重になっていることは容易に推測できる。そのため、母体の疲労は蓄積し、創部治癒が遅れ、悪露が長引き出血量も多いことが考えられる。その結果、母乳の量が減り授乳不足を招きかねないのである。よって、産後の手伝いがいない家庭が約半数あることから、どの母親が産後の手伝いがいないためにリスクが高くなるのか、124人道研究ジャーナルVol. 2, 2013