「人道研究ジャーナル」Vol.2

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「人道研究ジャーナル」Vol.2

The Journal of Humanitarian Studies Vol. 2, 2013から注目されている。今年の研究の評価として、研究員の昨年(2012年)1月から今年(2013年)1月の災害看護に対する意識の変化について10項目についてチエックリストを用いて、4段階で記入してもらった。その結果、国によって差異があるものの、災害看護の定義と概念、災害看護カリキュラムの内容、災害看護の指導方法等において、当初0%~25%という低い理解であったものが、75%~100%に上がっていることがわかった。平成25年(2013年)度は、自分で理解することができるレベルから指導者として教えることができるレベルまで高めていく予定となっている。2.日本赤十字看護大学の4分野(精神保健看護、成人看護、看護教育、高齢者看護)における研究以下の4領域において以下のような研究が進められている。研究成果は、表1のとおり、国内外の12の学会で発表した。1看護教育領域:研究代表者佐々木幾美教授(他4名)テーマ:「アジア圏の看護教育における災害看護の教授方法と方法に関する現状と課題」今年度は、日本およびアジア圏の看護系大学における災害・災害看護の教授内容と方法の現状を明らかにすることを目的に、質問紙調査を行った。日本の看護系大学165校、アジア圏の看護系大学255校に対して、質問紙を郵送し、現在、回答を待っている段階である。今後、この結果を集計し、その国独自の被災者及びコミュニティの特性に基づく「災害看護」教育の内容と方法を開発する基礎資料として活用していきたいと考えている。12月1日第32回日本看護科学学会学術集会で発表(ポスター)。2成人看護領域:研究代表者本庄恵子教授(他8名)テーマ「災害時における疾患や障がいをもつ人々への援助-東日本大震災に焦点をあてて-」震災から10ヵ月間の新聞記事を分析した研究成果について、「脳梗塞」「心不全」「透析」「難病」に焦点をあてた4演題を「第6回日本慢性看護学会学術集会(平成24年6月)」で発表(ポスター)し、「高血圧」「呼吸器」「糖尿病」に焦点を当てた3演題を「第9回WHO看護グローバルネットワーク学術集会(平成24年7月)」で発表(ポスター)した。平成24年度は、新聞記事の検索期間を平成24年3月31日までの1年間に広げたうえで、追加分析を行っている。さらに、「学術集会や講演会で発信される内容」「公的機関で公開されているガイドライン、情報提供内容」「東日本震災前に発表された先行研究」についての文献検討を行い、災害時における疾患や障がいをもつ人の体験とその支援を明らかにするための分析を進めている。3高齢者看護領域:研究代表者グライナー智恵子准教授(他4名)テーマ:「東日本大震災における被災高齢者の身体機能維持・向上に関する研究」平成24年度は、昨年度から開始した被災高齢者の身体機能の維持・向上を図る運動プログラムを継続して行い、6ヵ月間継続した効果を検証した。運動プログラムはストレッチ、タオル体操、筋力トレーニングを組み合わせたものである。45名のうち、6ヵ月間継続して運動教室に参加したのは27名であり、この27名を分析対象とした。性別は女性26名、男性1名で、平均年齢は70.1歳であった。身体機能を運動教室実施前と3ヵ月後、6ヵ月後において分散分析を行った結果、運動プログラムの実施により、運動教室開始前と比較して下肢の筋力、バランス機能共に有意な向上が認められた。研究参加者へカレンダーとスタンプを配布することにより自宅での運動プログラム実施意欲が高まり、運動教室以外にも継続して運動を実施できたことも結果につながったと考えられる。また、運動教室後にお茶会を開催して参加者同士の交流を図ったことも運動教室参加の継続につながったと考える。4精神保健看護領域:研究代表者武井麻子教授(他6名)テーマ:「災害における援助者の二次的PTSDへの予防教育に関する研究」今年度は、東日本大震災の救援に赴いた14名の看護師に対してインタビュー調査を行い、共通の体験として、「何もできなかった」という無力感が明らかになった。この感覚には、被害の規模に比して提供できる支援との落差、事前の想定と現実との落差が反映していた。また救援後には体験を語りたいがうまく言葉にならない、語ってもわかってもらえないというジレンマがあり、単に事前の教育だけでは済まない、系統立った対応の必要が明らかになった。人道研究ジャーナルVol. 2, 2013129