「人道研究ジャーナル」Vol.2

「人道研究ジャーナル」Vol.2 page 134/276

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「人道研究ジャーナル」Vol.2

The Journal of Humanitarian Studies Vol. 2, 2013国際人道支援セミナーのフォローアップとして~東日本大震災・国際人道支援研究会の発足?7月5日のセミナーにおいて、国際人道支援活動と今次震災における国内対応で共通して根底に流れる多くの課題があり、海外および国内の双方で災害対応や人道支援業務に携わっている関係機関がそれぞれの経験や強みを持ち寄ることで、国内および海外での対応を改善していくための具体的な取り組みをリードしていくことの意義が強く認識された。これを踏まえ日本赤十字国際人道研究センターが、セミナーの成果に基づき議論を継続・深化させるべく研究会立ち上げを提案した。その後セミナー共催三者で協議の結果、この提案に基づき研究会を発足させることで合意し、「東日本大震災・国際人道支援研究会」を発足させることとした。この研究会の目的は、特に東日本大震災の経験を踏まえ、国内および海外での人道支援・災害対応に関わる多様なステークホルダー間の率直な意見交換を通じて、東日本大震災での応急対応が国際標準や国際慣行に照らしてどうであったのかを検証し、次の日本における大規模自然災害への備えを強化すると同時に、震災の経験と教訓を踏まえよりよい国際協力を実現していくことを目指すことにある。具体的には「研究会」開催を通じて、主に以下の2つの観点から東日本大震災における緊急時対応の課題を整理するとともに、今後の関連する制度改革、国内災害対応機関間における相互理解の促進、調整メカニズムの強化および調整に関わる専門家の能力強化を含む人材育成等に向けた提言を行うことを目的とする。(1)日本における国際支援の受け入れ、調整、実施体制および法整備東日本大震災時に多くの資金・物資・捜索救助隊・医療チーム等、多くの国際支援が寄せられた。こうした支援はさまざま形態をとったが、いずれもその受け入れ、調整(特に被災地ニーズとのマッチング)、および実施で多くの課題が指摘された。日本全体としての受援システム見直し作業の一環としてこの問題を明確に位置付け、個別部門・組織の枠を超えたかたちで改善を図る必要がある。その際、既存の国際人道支援システムと関連する支援ツール・調整メカニズムとの整合性を踏まえた検討が不可欠である。加えて、アドホックもしくは属人的対応を余儀なくされた原因のひとつとして、災害時における国際支援受け入れに関する国内法の整備の遅れも指摘されているので、この観点についても見当が必要である。(2)国際人道支援に係る国際標準の日本における適用状況とそのための課題東日本大震災の教訓として、国際標準として確立しているさまざまな調整手法が必ずしも実践されなかった、あるいは実践される素地が日本になかったという点が上げられた。この観点から、特に現時点でさらなる検討が必要ということで主催者間で共有されている課題は、1被災者の苦痛の軽減に通じるものとして、スフィアスタンダードのような人道支援におけるスタンダードの適用とジェンダー配慮、被災者支援に関する手法、特に避難所マネージメント、特に平時の法・組織体系を適用することの限界と、人道支援および早期復興期における柔軟な行政ルールの適用、2支援側の調整の仕組みとして、クラスターシステムに代表されるような支援者間の調整メカニズム、特に国内関係者間での垣根を越えた連携・調整体制の強化、ニーズ調査と被災者とのコミュニケーションおよび情報管理ツール、人道支援のための軍―民連携、NGO、特に海外での緊急・人道支援で経験を有する団体・人材の国内対応での活用(現行の災害基本法含め、地方自治体のみを一義的な対応者とすることの限界)、民間企業の被災者支援における実質的貢献とより効果的なパートナーシップの可能性、などが挙げられている。すでに4回の会合が開催された。来年度中に議論を総括する最終成果物として小冊子にまとめ刊行することとしている。132人道研究ジャーナルVol. 2, 2013