「人道研究ジャーナル」Vol.2

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「人道研究ジャーナル」Vol.2

The Journal of Humanitarian Studies Vol. 2, 2013ICRC事業局長による2013年所信表明ピエール・クレヘンビュール1ここでは、武力紛争およびその他の暴力を伴う事態によって被害を受ける人たちが直面している状況、ならびに、2012年10月末時点での世界約80ヵ国のICRC現地代表部/事務所の主な活動目的と予算について解説します。現代の武力紛争の傾向現在、ICRCが活動対象としている武力紛争やその他の暴力を伴う事態を分析すると、きわめて多くの特徴が強く見られます。まず一つ目の特徴は、「アラブの春」として知られる北アフリカ、中近東での民衆蜂起によって生じた多様な課題、分裂そして不安定な状況があります。一年を通して政治的な移行が速やかに行われたり、効果的な選挙が実施された国もありますが、武力衝突などに直面する国もありました。中でもシリアは、武力衝突や人道上の問題が急激に増加し、何万人もの人が死傷、数百万人が国内外で避難生活を余儀なくされ、何千人もが収容されています。この紛争が収束する見込みはなく、政治的解決策もない現状は、非常に深刻な問題として市市民に影響を及ぼしてしまうことでしょう。この地域の問題は、一層懸念されます。二つ目の特徴は、サヘル地区の一連の不安定な展開で、特にマリ北部で観られました。マリの分裂は新たな人道ニーズを生み、その暴力の拡大は周辺国に不安を与えています。蔓延する食糧不足、地元市場や、保健医療、水、電気など生活必需品の供給に支障をきたしているマリ北部では緊張は増す一方です。三つ目の特徴は、国際治安支援部隊からアフガン当局への治安維持の任務の移行です。アフガン市民は30年間、治安の悪化と人権侵害に直面してきました。2014年までに予定されている外国派遣軍の大幅な撤退に向けて、アフガン市民の未来に関する深刻な課題が挙げられています。〝アルカイダ組織戦争″に関しては、条約上の軍事介入から特殊部隊と無人飛行機による軍事行動への移行が進んでいます。四つ目の特徴は、武力紛争の長期化が市民に様々な面で悪影響を及ぼしていることです。例えばソマリアでは、特に中部と南部の多く市民が多様化する危機とニーズに直面しています。これはアフリカ連合派遣部隊を含むソマリア暫定政府を支持する軍隊とアル・シャバブによる衝突が、ここ一年で激化していることが原因です。独立後一年の南スーダンでは、スーダンとの戦闘、そして両国内での内戦の影響によって難民や避難民の問題は拡大しています。イラクでは長引く紛争によって、多くの市民が犠牲となっています。夏には、一週間で最大規模の死傷者を出したときもありました。コンゴ民主共和国(DRC)では、政府軍とM23戦闘員の闘いが更に激化し、政治的解決策が見出されないまま、民間人が大きな被害を受けています。コロンビアでは、長期化する戦いを終結させるために政府軍とコロンビア革命軍の間で幾度となく話し合いがされているにも関わらず、内戦が続いています。五つ目の特徴は、深刻な人道危機をもたらす原因となるその他の暴力を伴う事態です。一部アジアにおけるコミュニティ間の戦いやアフリカでの部族同士の衝突、そして主要都市部での国軍対暫定武装集団の戦闘などが例として挙げられます。最後に、世界は経済危機にいまだ見舞われています。例えば欧州では、増え続ける負債と失業率によって紛争地に住む親族への仕送りが滞っている出稼ぎ労働者も少なくありません。2007-2008年と2010-2011年1 ICRC国際救援派遣員としてエルサルバドル(1991-92)、ペルー(1992-93)に着任し、アフガニスタン(1993-95)ではジャララバード事務所長を経てカブール副代表に就任。その後ボスニア・ヘルツェゴビナ代表など複数の管理職ポストを歴任。1998年よりジュネーブ本部においてコソボ紛争特別委員会を率いるなど中央・南東ヨーロッパを管轄し、陣頭指揮をとる。ICRC総裁個人顧問(2000年)、2002年7月より現職。スイス人。12人道研究ジャーナルVol. 2, 2013