「人道研究ジャーナル」Vol.2

「人道研究ジャーナル」Vol.2 page 154/276

電子ブックを開く

このページは 「人道研究ジャーナル」Vol.2 の電子ブックに掲載されている154ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「電子ブックを開く」をクリックすると今すぐ対象ページへ移動します。

概要:
「人道研究ジャーナル」Vol.2

The Journal of Humanitarian Studies Vol. 2, 2013ところAPO503便があるだけです。しかし、10月6日付で我々から発送した最初の郵便は、今日すなわち11月14日現在ではまだ本部に届いてはいないようです。私がアメリカ・ゾーンと呼んでいる圏内で、すなわち、ここにはアメリカ軍が駐留しているからなのですが、私どもは、アメリカ赤十字社と同じ便宜が得られるようにと手続を踏んでいるところです。うまくいくことを願っています。以上のような次第でいかなる点において東京が遮断されているか御納得されることでしょうし、なぜ我が代表部からの連絡が少しもないのかも御理解いただけることでしょう。考えてもみて下さい。私達の方もジュネーブのことについて同じようなことを思っているのです。なにしろ、日本の無条件降伏以後、ジュネーブの本部からは何の郵便も届いていないのですから。渉外関係についてアメリカ軍との関係:私達としましては占領軍との関係に満足するしかありません。アメリカ軍は私達に対して愛想のよい言葉を並べ立てる人々ではありませんが、親切にも私達の業務に最大限の便宜を図ってくれました。(ビルフィンガーによる極めて遺憾な場合を例外として)私達がプライベートなことでアメリカ軍に便宜を求めるということは、全くありませんでした。しかし、我が代表部のために、そして私どもが置かれていた状況では、あえていかに控えめに申しましても、代表部に属している多くの要員がアメリカ軍のもとに足繁く通い、便宜を図ってくれるよう求めました。もっとも、赤十字国際委員会の威信は極東地域におけるその業務遂行中に問題が起きても、幾分役立ってくれました。だからこそ、上海会議が広く注目を集めるとすれば、それは、以下のことを示すことがあるでしょう。即ち、ジュネーヴからの一代表の周遊旅行以上に、私達(赤十字国際委員会代表ら)が業務上の様々な可能性を捉えて?それらの可能性が私達にあるものもあれば、ないものもありますが?総てのことをできるだけ明らかにしたがっているということです。赤十字国際委員会が必要としている要員とは、アメリカ軍に認知されており、かつ、既に私が電報の中で御連絡しましたように、愁眉の課題となっているところの諸問題の中に於いてアメリカ軍が完全に信用を置くことのできるような人物なのです。当代表部が特に接触(19しているのが、サムス大佐をその長とする公衆衛生福祉局です。この部局は民間救援局)とも通称されています。それから程なくしてアメリカ赤十字社(のチームが)着任しました。私達は彼らとはいつも交流しております。特に、(海外との)メッセージのやりとりや調査の実施については彼らの協力を得ております。お伝えしておくべきこととしては、アメリカ赤十字社の代表者らは総てアメリカ軍関係者だということです。彼らは、その本来の任務に付随して多かれ少なかれ次の業務にも従事しています。すなわち、実戦部隊が必要としている酒保(コーヒー、ドーナッツ)、保養、娯楽等々全般を補助することです。そういうわけで、アメリカ赤十字社代表者らが連合国国籍非戦闘員ないしは交戦国籍非戦闘員への救援に関わるということは異例でしかないのです。しかしながら、アメリカ政府当局はクリスチャンソン、ムーア両氏に命じて日本赤十字社との接触に当たらせました。日本赤十字社を民主化してしまうことも連合国軍最高司令部側の全般計画の中に含まれているようです。更に私が連絡を受けたところによれば、アメリカ赤十字社が東京に次のような一人の顧問を派遣することに決定したとのことです。すなわち、GHQの公衆衛生福祉業務に携わり、かつ再編成中の日本赤十字社に助言することをも任務としているような顧問です。目下日赤で進行中の再編成では、社会的側面、すなわち、無料診療所、公衆衛生等々を充実させていくはずです。クリスチャンソン氏はアメリカ赤十字社太平洋方面担当部長です。日本赤十字社と我々との関係は非常に良好です。10月25日、我々瑞米両国の総ての赤十字代表が、日赤名誉総裁である高松宮殿下の私邸での晩餐に招かれました。非常に盛会でした。本日、11月15日には、私は殉職した日赤関係者の追悼式に於いて追悼の辞を述べました。米国赤十字社のムーア氏も何か一言述べることを諒承していました。米国赤十字社と日赤との間の関係は非常に良好ですので、私ども赤十字国際委員会駐日代表部が両者の間に入る必要は全くありません。152人道研究ジャーナルVol. 2, 2013