「人道研究ジャーナル」Vol.2

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「人道研究ジャーナル」Vol.2

The Journal of Humanitarian Studies Vol. 2, 2013(参考資料Ⅲ)Dr.ジュノーの1945年11月5日付け報告愛知大学大川四郎教授訳駐日代表部(1)東京、1945年11月5日委員長そして皆様昨日朝、私としては事前にいささか疑念があったのですが、公使閣下が私にお話下さったことによると、閣下はイギリス政府当局からの許可を得てロンドンに向けて回航する軍艦に便乗して帰欧するとのことでした。というわけで、外交行李に託すべき長文の報告を皆様宛にしたためる時間が私にはありませんでしたから、御帰国の折にはジュネーブにお立ち寄り下さって、日本での現下の情勢についてじかにお話し下さるようにと閣下にお願いしました。私が思いますには、公使閣下がお話し下さる御見解は公使館サイドのものであって必ずしも(赤十字国際委員会駐日)代表部側の見解であるとは限りません。しかしながら、公使館サイドであるとは申せ、閣下の御見解は日本に於ける尋常ならざる御経験のことごとくを物語ることでしょう(この報告を口述するにあたって速記タイピストを使うことができませんでした。このため、私は貴重な時間を浪費してしまいました)。上海会議(2シオルデ氏)とデブール女史とを極東に着任させるに必要な諸手続に関する御指示を、私は綿密に検討致しました。しかしながら、ビザを取得することが遅れております。と申しますのは、太平洋管内に入る許可証を発給するにあたって、占領軍当局が非常に多くの書類を要求するからです。当地で私どもに伝えられている(3ところによると、決定権を握っているのは(アメリカ)陸軍省)であるとのことですが、その一方では、申請されているビザを発給することについて、異議の有無をいつもGHQに照会してくるのは陸軍省であるとも私どもは聞かされているのです。ジュネーブの本部から皆様が派遣を予定しておられる代表について、私としては、(アメリカ)陸軍省からの照会を待たずにGHQはワシントンにあててアグレマンを送るべきだ、と主張しております。しかし私にできるのはここまでです。思っても見て下さい。ビルフィンガーの件は連合国軍最高司令部のどの部局にも知れわたっているのです。しかも、我々にとって好意的であった占領軍当局の姿勢に彼は悪い影響を与えてしまいました。GHQに勤務している財務担当者(この人物が責任あるポストを占めていないのは確かですけれども)とストレーラー女史が交わした会話の中で、この人物は彼女に次のように述べたそうです。すなわち、「アメリカ合衆国では赤十字国際委員会の指導部に好意的ではないグループがある」、と。この人物が続けて言うには、「こうしたグループがそれを知っておそらくは拍手喝采しているであろうことというのが、赤十字国際委員会の代表がその(外交官に順ずる)立場を奇貨として自分のプライベートな用務を混入させていること、そして赤十字国際委員会がこうした代表らのプライベート・ビジネスがらみの電報の送信に加担していることだ」、というのです。私どものねばり強い介入が功を奏して、ワシントンに宛てられたこの種の連絡は総て差し止められたようです。しかし、このために私としては、ビルフィンガー氏を(赤十字国際委員会駐日代表部)代表の地位から解任せざるを得ませんでした。次いでゴルジェ公使が個人的にGHQにかけあい、事件ができるだけ早く抹消されかつスキャンダル沙汰とならないように骨折って下さいま人道研究ジャーナルVol. 2, 2013157