「人道研究ジャーナル」Vol.2

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「人道研究ジャーナル」Vol.2

The Journal of Humanitarian Studies Vol. 2, 2013はできません。もし日本側の収容所を査察するならば、アングスト氏は私どもにとり重宝な存在となることでしょう。というのも、氏は完璧な英語を話すばかりか、日本語もほぼ流暢に話すことができるからです。私が思いますに、氏は当代表部代表のうちこれら両言語を話すことができる唯一の人物です。氏は小包配送についての報告書をまとめ終えました。私個人のことについて申しますと、意図的に電報で申上げましたように、来年3月頃には帰国することをお認め下さるようにお願いします。英国に立ち寄り、妻とそしてまだ見ぬ息子とを伴って帰国したいのです。会議が開催される時点で私がジュネーブに居合わせていることが、本部にとって役立つのではと私は思います。なぜならば、私の頭の中には極東における赤十字国際委員会の状況と多くの知識が詰まっており、それらは我が赤十字国際委員会の弁護に資するかもしれないからです。さもなくば、赤十字国際委員会、そして極東における我が代表部の今後についての沢山の構想案とが批判されることとなるでしょう。これら総ての赤十字国際委員会代表部を維持することが、本部にとりどれほどの財政的負担となるかをよくよく考えてみなければなりません。もしかすると、巡回代表部方式を導入する方策があるかもしれません。その方が財政的負担は軽くて済むのですから。以上の点につき本部の御意見を御連絡いただきたく存じます。ついては、シオルデ氏が最後の点について本部からの貴重な御指示を私に取り次いで下さるとよいのですが。ストレーラー女史は今後の進路については私に、まだ何も語り得ない状況にあります。しかし、1945年12月11日以後は理屈の上では赤十字国際委員会本部からの全任務から自分は解かれている、と女史は考えています。従って、来年3月になると赤十字国際委員会駐日代表部では代表がいなくなるという状況につき、本部としては慎重にお考えになるべきです。このことは、GHQに対してばかりでなく、とりわけても日本政府への対応としては得策ではないと私は思います。なぜならば、今の日本政府は外交関係を何も有してはいないので、たとえ赤十字という窓口ではあっても、おそらくは、世界へとつながる一つの小さな窓口をとどめておきたがっているからです(何と時の経過は早いことでしょうか!)(6)。行方不明・死亡となっている捕虜についての情報前述致しましたように、死亡した連合国軍捕虜の氏名の転送作業は、遅々として進みません。内密ながら付言いたしますと、作業が遅れていることの大部分は、アメリカ軍側復員局主任のミスによるものです。実際のところ、この主任は俘虜情報局に対して命令を出すだけにとどまり、はたしてここの局員らが照会されている情報をこの主任に伝えるだけの手段と伝えようという意思があるかどうかを、確認すらしていないのです。これとは全く対照的に、オーストラリア政府を代表しているウィリアムズ少佐は、私どもとは良好な関係にありますが、自ら俘虜情報局に出向き、捕虜となっているオーストラリア軍兵士に関する限り、同局が保管している総ての書類を点検したのです。こうして同少佐は、行方不明となっていたオーストラリア軍兵士ほぼ総ての手掛かりをつかむことができました。少佐の為した仕事は、いつの日にか人口に膾炙(かいしゃ)することでしょう。どうしてアメリカ軍、イギリス軍、オランダ軍が、ウィリアムズ少佐と同じように能率的に作業を進めることができないのか、私は理解に苦しみます。私がこれら三者のために行方不明中の捕虜捜索の作業を行なってやりたいのですが、当方では人員不足のために行なうことができませんでした。私の意見では、ウィリアムズ少佐は、日本軍の捕虜となっていた他の連合国軍兵士の捜索について前もって、6ヵ月を要したようです。行方不明又は死亡したにせよ、(リストから)抜け落ちている連合国軍捕虜の消息を突き止めようとしている赤十字国際委員会駐日代表部が直面している困難がいかなるものであるかを語り得ることができるのは、私が東京で遭遇したあらゆる連合国軍関係者らの中でも、同少佐だけです。以上のいきさつについては、もれ(7なくモリエー夫人)にお伝え下さい。そして、「モリエー夫人ならば(日本の)俘虜情報局がいかに無能であるかが完全にのみこめたはずだ」ともお伝え願います。俘虜情報局に関する私の報告書をお読みになったところで、本部の皆様方としてはなおも理解に苦しまれることでしょう。「各国における公式な俘虜情報局についての同様な報告書の提出を全代表に求めると有益であり、しかも、万が一、将来において戦争が勃発した場合人道研究ジャーナルVol. 2, 2013161