「人道研究ジャーナル」Vol.2

「人道研究ジャーナル」Vol.2 page 208/276

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「人道研究ジャーナル」Vol.2

The Journal of Humanitarian Studies Vol. 2, 2013によって9,100億米ドル(世界のGDP総額の約16%)の損害が生じた。災害は件数、規模ともに悪化しており、特に水害は急激に増加している。これらの災害は、勢力が拡大しているとともに、その影響も局地に集中する。そして富裕国でも貧困国でも、最も大きな人的被害を受けるのは、最弱者層のコミュニティである。被災者集団は、都会で低水準の住宅に住み、衛生的な環境もなく、救急サービスも受けにくいため、特に急速な都市化によって既存の脅威がさらに悪化する。この重点分野は、災害対策からリスク削減、救援、復興、開発までの災害に関するあらゆる領域を網羅し、次の役割を果たす。?忘れられた災害や顧みられない災害をはじめとする多くの災害が人間に与える影響を示すことで、苦境にある弱者の声を代弁する。?災害の件数と規模の悪化、および我々の対応能力に対する世界の認知を高める。?人道支援を受ける際の不平等に光を当てる。?各国赤十字・赤新月社の効果的な対応と資源の不足に光を当てる。?災害発生後の対応から、災害予防へと移行する必要性を示す。?災害法(IDRLを含む)や災害リスク削減(食糧安全保障問題を含む)の整備を進め、気候変動に関する対話に効果的に参加する。(ⅱ)医療サービスを受けにくい人々に目を向ける(戦略目標2に準拠)WHOは、医療の不平等を不当で回避可能な格差と捉え、この格差が健康上の多様な結果を生むとしている。医療の不平等は、日々の生活条件に起因すると同時に、各地方や各国、各地域レベルでの富や権力、資源の不均等分布によって生じる健康上の社会的決定要因の産物である。医療の不平等は、回避可能な疾患や死を招くため、この不平等の解消は不可欠である。?医療サービスにおける不公平・不平等は、ミレニアム開発目標や赤十字・赤新月運動の関連目標の達成にとって大きな障害となる。そこでこの重点分野は、次の役割を果たす。?医療サービスを受けられない苦境にある弱者の声を代弁する。?赤十字・赤新月の役割を、医療サービスの提供における不平等の是正と定め、特に妊産婦と新生児、小児の健康をコミュニティベースのヘルスケア・ネットワークによって守る。?医療サービスの提供問題について、ポリオやマラリア、結核、HIV、はしかの撲滅活動とより緊密に連携する。?社会的運動と予防活動を推進する必要性を示す。(ⅲ)非暴力と平和の文化を推進する(戦略目標3に準拠)暴力や差別、排他性は、「他者」に対する無知と恐れが原因となることが多く、現在も世界中で多くの人々を苦しめる大きな人道問題であり続けている。加えて現代では、人種や性別、文化、宗教による溝がさらに深まっている。各国赤十字・赤新月社には、人々のあらゆる苦痛を軽減するため、これらの人道問題への認知を高め、各国政府に背後の根本的問題と社会的決定要因への取り組みを促す道徳的責任がある。また各国赤十字・赤新月社は、中立と公平の基本原則によって、対話の基盤を築き、既存の溝の架け橋となり、人としての独自性が差別なく認められるような社会を築くことのできる特権的地位にある。そこでこの重点分野は、次の役割を果たす。?非差別、多様性の尊重、社会的一体性の実現、非暴力の取り組みを推進することで社会の緊張を緩和し、連盟の思想的リーダーシップを実証する。?非差別、社会的一体性、非暴力によってもたらされる社会的、健康的、経済的利益を示す。?人の生き方、および人との関係や人類が共有する地球環境との関係を変えられるよう、人々の意識や態度の転換を促す。206人道研究ジャーナルVol. 2, 2013