「人道研究ジャーナル」Vol.2

「人道研究ジャーナル」Vol.2 page 22/276

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「人道研究ジャーナル」Vol.2

The Journal of Humanitarian Studies Vol. 2, 2013と抗議を行ったにもかかわらず、兵士によってカタンガ医療ケアセンターから移動させられた。また、別の地域では、傷病者は医療へのアクセスや医療の質の面で差別される。国際人道法や人権法で禁止されていて医療倫理に反していても、民族、宗教あるいは政治的な理由から、患者の治療を拒んだり、質の悪い治療を施したりする医療従事者がいる。このことはキルギスタンやルワンダでの民族対立、ジンバブエやレバノンでの政治的緊張状態、ミャンマーのイスラム教徒・ロヒンギャなどの少数のグループが抑圧されている国などで見られる。最近のバーレーン、シリア、イエメンでの社会不安では、抗議行動に参加する者は、自分たちが負った傷から身元が判明し、より激しい報復を引き起こすことを恐れて医療施設を利用しない。戦闘員は負傷者を探し出し、助け、安全な場所に移動させなければならない。しかし、武力紛争下ではそうした行為の不履行が頻繁に生じ、実際に証明することは難しいものの、負傷者の権利に対する最終的な違反の一つとなっている。前述のガザでの事件で、検問所の兵士は、負傷者やひん死の状態にある者、錯乱した子どもの叫び声を無視したが、これは特別な例ではない。世界中の紛争において、戦闘員は交戦の中捕えられた文民を保護する責任を見過ごす。負傷した文民を病院に連れてくるのは家族や近所の人であって、制服を着たり武器を持っている人ではない。また患者の家族や隣人も患者と同様無防備で、医療施設内や病院への行き来において攻撃や差別を受ける。法の規定1949年のジュネーブ諸条約と1977年の追加議定書は次の条項を定めている。?傷病者、虚弱者、妊婦は特別に保護され、尊重される対象とならなければならない。?傷病者は虐待や略奪から保護されなければならない。?いかなる者も医療援助や治療行為を受けずに意図的に放置されてはならない。?状況が許すときにはいつでも、また特に戦闘後は、紛争の各当事者は敵や味方の区別なく、遅延なく傷病者を探し、収容し、避難させるすべての可能な措置を取らなければならない。? ICRCは特別な役割をもっており、傷病者や文民を戦争の影響から保護する中立区域の設立を準備・調整することを認められている。?紛争当事者は傷病者を保護する一次的な義務を負う。地域住民や人道機関、第三者による保護は、当事者の義務を軽減しない。人権法をはじめ、世界人権宣言、市民的及び政治的権利に関する国際規約、経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約、また他の諸条約は次のことを確認する。?すべての者は生命に対する権利を有する。国家は人々の生存を脅かす状況において傷病者の医療ケアを意図的に制限し遅らせることを控えなければならない。?武力の使用が不可避な場合には、法の執行者は被害を受ける者に対する医療支援を可及的速やかに保証しなければならない。?すべての者は、身体及び精神面において、可能な限り水準の高い医療を享受する権利を有する。国家は少なくとも基本的な医療行為を提供しなければならない。?すべての者は差別なく、最低限の医療設備およびサービスにアクセスできる権利を有する。国家は、たとえば政治的思想において敵対する者などに対して、そうしたアクセスを意図的に拒否したり制限することを控えなければならない。?国家は、個人が健康に関する権利を享受できることを可能にし、また支援するための積極的な措置を取らなければならない。20人道研究ジャーナルVol. 2, 2013