「人道研究ジャーナル」Vol.2

「人道研究ジャーナル」Vol.2 page 248/276

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「人道研究ジャーナル」Vol.2

The Journal of Humanitarian Studies Vol. 2, 2013連盟が有する規約上の権限には、「人的被害を防止・軽減することによって世界平和の維持・促進に貢献することを目的として、常に赤十字・赤新月社のあらゆる人道活動を喚起・奨励・援助・促進すること、赤十字・赤新月社間の連携・調整・研鑽のための恒久的組織として活動し各国赤十字・赤新月社からの要請に応えて支援を提供すること、ICRCとの間で締結されている協定に従って武力紛争犠牲者の支援をおこなうこと」8が含まれている。紛争によって極めて困窮している人々に提供する保護および支援の効果を最大限に高めるために武力紛争およびその他の暴力状況に備えまた対応する際には、運動の各構成組織が有する権限、能力、および独自の立場に十分配慮しなければならない。支援活動を展開するにあたっては、そうした要因を念頭に置くとともに、運動構成組織それぞれの受け入れはどの程度容認されているか、ならびに、対応するのはICRCと各国赤十字・赤新月社のいずれがよいか、それともその両者が協力した方がいいのか、といったことを考慮しなければならない。武力紛争およびその他の暴力状況から被害を受けている人々や地域の人道上のニーズへの対応の強化を、運動の合意事項と組織機構に従って、それぞれの場所で異なる状況やニーズに基づいておこなうためには、運動内の協力体制を強化し、「その他の暴力状況」から発生する特有の問題点について運動構成組織内でさらに議論を重ね、そうした事態への準備・対応・復旧活動の集中度を高めることが求められる。各国赤十字・赤新月社からの要請に対するICRCの対応近年、多くの各国赤十字・赤新月社が、絶えず変化する状況に対応するために、武力紛争およびその他の暴力状況における対応を強化する重要な対策をとっている。各国赤十字・赤新月社のベストプラクティスに基づいて、ICRCが「支援活動の安全性向上に関する枠組み」を策定した9。この枠組みには、個人・地域・武装勢力・関係当局からの支持を高めて武力紛争およびその他の暴力状況において支援を必要としている人々や地域への支援活動の安全性を高めるために各国赤十字・赤新月社が実行すべき、組織間の連携を要する数多くの活動について概要が示されている。12009年代表者会議の全体会議0において、各国赤十字・赤新月社がICRCに対して、武力紛争およびその他の暴力状況において活動する赤十字・赤新月社向けに活動指針を策定するよう要請した。各国赤十字・赤新月社との包括的な協議をおこなった結果、すべての赤十字・赤新月社が武力紛争およびその他の暴力状況に対して準備を整え対処する能力を強化するための実用的指針を策定する土台として、「支援活動の安全性向上に関する枠組み」と赤十字・赤新月社の最新の経験から得られた教訓とを活用することが決定された。この指針は、特に武力紛争およびその他の暴力状況に対して運動全体で組織的に対応する際に紛争国の赤十字・赤新月社がその権限と役割を履行するのを助けるものであり、「セビリア合意および追加措置」の実務への適用を強化するとも考えられる。II.課題今日、武力紛争およびその他の暴力状況によって運動の支援活動にもたらされる新たな課題が増大しつつある。そのうち特に重大なものをいくつか以下に示す。赤十字・赤新月社のスタッフやボランティアなどの人員および施設・機材に対して繰り返しおこなわれる攻撃、ならびに人道支援の受益者にもたらされる被害が懸念されている。一部の赤十字・赤新月社は、受益者への支援活動に影響力をもっている人々によって、武力紛争およびその他の暴力状況のあらゆる局面において、困窮している人々に対する人道支援を妨害されており、あえて支援を9支援活動の安全性向上に関する枠組み」は、赤十字・赤新月社がより広く受け入れられて受益者に対する支援活動の安全性を高めることを促す紛争対応活動に、基本原則ならびにその他の運動方針を適用するという考えに基づいている。その要素には、状況・リスク分析、赤十字・赤新月社が武力紛争およびその他の暴力状況に対応する法律上・方針上の根拠、赤十字・赤新月組織受容の保証、赤十字・赤新月社のスタッフ・ボランティア・構成員の受容、赤十字・赤新月社関係者のアイデンティティ、施設・車両、内外のコミュニケーション、安全管理(ガイドラインおよび防衛手段)がある。1 0 2009年代表者会議ワークショップ5(責任とパートナーシップの共有による総体としての成果の向上)と、「セビリア合意および追加措置」についての議論に関連する全体会議。246人道研究ジャーナルVol. 2, 2013