「人道研究ジャーナル」Vol.2

「人道研究ジャーナル」Vol.2 page 25/276

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「人道研究ジャーナル」Vol.2

The Journal of Humanitarian Studies Vol. 2, 2013医療車両への暴力暴力は、医療車両に対する攻撃、窃盗、干渉を含む。医療車両とは、文民用または軍事用にかかわらず、救急車や医療船舶、航空機、また医療補給物資や医療器具を輸送する車両を含む。医療関連の輸送に影響を及ぼす暴力の最後の事例は、医療車両に対する攻撃である。当然のことながら、医療施設、医療従事者、医療車両を保護する法には多くの重複があり、それらに向けられた攻撃の種類も類似する。しかしながら、医療車両への攻撃の数と、敵を欺く目的で増発している医療車両の悪用の実態を踏まえると、個別のテーマとして論じる必然性がある。負傷者を収容し支援するために紛争の真っただ中を巡回する救急車は、不慮にあるいは意図的に射撃されることがある。リビア赤新月社によれば、2011年5月、4日間で3台の救急車がそれぞれ別個に射撃され、看護師が死亡、患者1人とボランティア3人が負傷した。別のボランティアはZlitanで殺された。こうした犠牲は、2006年のレバノン紛争を思い出させる。8月11日に2台の救急車が別々の事件で攻撃された。TyrからTibnineに向けて医療物資を積んでいたレバノン赤十字社の救急車が空爆に会い炎上、乗車していた救急隊員が負傷した;もう1台は、Marjayoun地域で空爆の被害を受けた犠牲者の救援に来た際に銃撃され、レバノン赤十字社の救急隊員が命を落とした。救急車への攻撃は、パレスチナ占領地やコロンビア、メキシコ、イエメン、イラク、リビアで起こっている。またネパールでは1996年から2006年の紛争中に生じた。リビアやパレスチナ占領地、アフガニスタン、ネパールでみられたいくつかの意図的な攻撃や、妨害・遅延の多くは、過去に起こった救急車の誤用に対する人々の不信からきている。すべての誤用が必ずしも危害をもたらすものではない:ネパールでは、政治家が救急車を私的なタクシーとして利用したり、または国全体を麻痺させたストライキによる道路封鎖の不都合を避けるために利用したことを、ある救急車の運転手がこぼしていた。しかし武装集団によっては、背信行為に関わり、敵を欺くために医療ミッションを意図的に悪用する。アフガニスタンでは、反政府武装勢力が救急車に爆発物を詰め込み、警備の非常線を超えさせた。ICRCは、12人が死亡した2011年4月7日のカンダハールの警察訓練センターに対する「救急車」攻撃に続いて、この国際人道法の重大な違反を非難した。これに対してタリバンのスポークスマンは、調査を行うことを約束し、このような攻撃を二度と起こさないことを伝えた。リビアでは、軍事活動を支援するための赤十字と赤新月の標章の誤用および、武器と武装戦闘員の輸送目的での救急車の使用について、ICRCに対して申し立てがあった。保護標章や保護された施設・車両の誤用を通じて生じる信頼の裏切りは、紛争における中立の組織が生まれた目的そのものを損なう悪循環をもたらす。敵を欺くためにせよ、目的は何であろうと救急車が乱用されると、あらぬ疑いをかけられ、他の車両と同様の遅延や妨害にさらされるどころか、最悪の場合は攻撃対象となる。いずれの場合にせよ、紛争中に命を守るためのメリットを失い、緊急の医療上の配慮を必要とする負傷者にとって不利となる。「医療ケアサービスの中立性を欺く行為は、病院、診療所や地方の医療拠点で負傷者の看護に従事する医療従事者を危険に陥れる。」2011年4月7日にアフガニスタンで起きた、救急車の誤用を非難したICRCの声明法の規定?医療車両はいかなる時も尊重され、また保護されなければならず、攻撃の対象となってはならない。?医療設備は攻撃の拠点として、あるいは兵士や他の軍事目標を攻撃から隠すために用いられてはならない。?医療車両は、人道的な目的以外で、敵に有害な行動を行うために用いられた場合には保護対象でなくなる。人道研究ジャーナルVol. 2, 201323