「人道研究ジャーナル」Vol.2

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「人道研究ジャーナル」Vol.2

The Journal of Humanitarian Studies Vol. 2, 2013保護の責任を負うが、戦闘当事者がこうした義務を果たせない、または果たす意思がない場合、国際人道機関による補完的な活動が許されている(10)。この点を踏まえつつ、次節では、国際アクターによる文民の保護の実践をOCHAの役割にも触れながら紹介したい。1.現場レベル保護に関するマンデートを持つ国際機関にはICRC、国連難民高等弁務官事務所(United Nations HighCommissioner for Refugees: UNHCR)、国連児童基金(United Nations Children's Fund: UNICEF)、国連人権高等弁務官事務所(Of.ce of the United Nations High Commissioner for Human Rights : OHCHR)などがあり、それぞれの機関は各専門分野における保護活動を展開している。例えば、難民/国内避難民の登録作業や、バラバラになった家族の追跡と再統合支援、性暴力/搾取被害者のフォローアップ、避難民キャンプ設営者や軍・警察関係者へのトレーニング、元児童兵に対する社会復帰支援、深刻な法令違反や人権侵害が発生した時の抗議等、さまざまな具体的活動が保護のためのプログラムとして実施されている。同時に、例えば食糧・水等の配給場所や方法を、女性が嫌がらせや暴力の標的とならないよう工夫することなども保護の実現に不可欠であることから、保護の視点を反映させることは各セクターに共通する課題でもある。加えて、一時的な保護の実現のみならず、恒久的解決(Durable Solutions)のための努力が必要である。これらを踏まえつつ、国際人道アクターによる保護活動・対策の類型を、保護に関するリスクや侵害の程度に応じて概念的に整理すると以下のように示すことができる(11)。表ISubstitutionCapacity BuildingPersuasionMobilisationDenunciation直接的なサービスの提供既存の制度・組織をサポートする責任を果たすよう関係アクターを説得するポジティブな形で圧力がかかるよう、注意深く情報を共有する情報を公開し加害者を非難する人々にとっての「プロテクションリスク」を低減させるためには、人権侵害の予防・停止に取り組み、もしくはすでに侵害が発生した場合はその即座の影響を緩和すること(Responsive)、被害者の尊厳を取り戻し回復するための支援をすること(Remedial)、そしてより権利が尊重されるよう、社会・文化・制度及び法的環境を整備すること(Environmental Building)が必要となる(12)。国際人道アクターには、時に極めて深刻な文民の保護に関わる状況を傍観する、あるいは受身の対応をとるのにとどまらず、情勢を総合的に判断しながら、こうした手段をうまく組み合わせて、制約条件の中でも保護の実現に向けて最も効果が上がる方策を能動的に模索することが求められている。こうした文脈においてOCHAも文民の保護を実現するために様々な形で貢献している。特に保護に関する諸課題については人道調整官が人道カントリーチームを代表してアドボカシー活動を行うこととなるが、OCHAの現地事務所が技術的なアドバイスや実際的なサポートを提供している(13)。またOCHAは人道カントリーチームの調整役として、UNHCR・UNICEF・ICRCなど、保護のマンデートを与えられた諸機関が協調することで、文民の「プロテクションニーズ」に対して効果的・包括的かつ調和の取れた対応が実現するよう努力している(14)。例えば人道支援のための共通の戦略的枠組みでありOCHAが取りまとめ役を担う統一アピールプロセス(Consolidated Appeals Process)などに保護に関する課題を反映することや、保護活動を行う機関が集まるプロテクションクラスターを通じた戦略形成、文民の保護状況に関するモニタリング、または平和維持活動や人道目的のための軍民調整(Humanitarian Civil-MilitaryCoordination)への関与等の形で役割を果たしている(15)。人道研究ジャーナルVol. 2, 201329