「人道研究ジャーナル」Vol.2

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「人道研究ジャーナル」Vol.2

The Journal of Humanitarian Studies Vol. 2, 20132.政策・本部レベル1999年、国連安全保障理事会決議S/1265に基づき、武力紛争下における文民の保護について初めて安保理が事務総長に報告を要求した。以降、OCHAはUSG/ERC(Under-Secretary-General and EmergencyRelief Coordinator)を組織的に補佐するかたちで、以下の政策もしくは本部レベルでの関与を行っている(16)。?安全保障理事会宛事務総長報告書の作成・取りまとめ? USG/ERCによる文民の保護に関する安全保障理事会での定期ブリーフィング?国連総会、経済社会理事会、人権理事会等への報告?安全保障理事会専門家グループ(17)に対する特定の国の状況に関する定期的なブリーフィング?安保理での議論に関連する規範面でのガイダンス(18)?グローバルプロテクションクラスターにおける関連機関間共通のガイダンス作成及び現地サポートのための要員派遣?関連する調査の実施このように、OCHAは国連システム及び国際人道コミュニティーを代表して、安全保障理事会を中心とした文民の保護に関するグローバルな政策や規範形成に大きな役割を担っている。そして特に2009年の国連事務総長報告書では、現代国際社会が直面する5つのコア・チャレンジが以下の通り提起されている(19)。表II5 Core challengeEnhancing compliance of parties to the conflictwith their obligations under international law, inparticular the conduct of hostilitiesEngagement with non-State armed groups(NSAGs)Protecting civilians through UN peacekeepingand other relevant missionsHumanitarian accessEnhancing accountability for violations5つのコア・チャレンジ紛争当事者による国際人道法の遵守非国家武装集団の関与国連PKO(United Nations PeacekeepingOperations:国連平和維持活動)、及びその他のミッションによる文民の保護(20)人道アクセス違法責任の追及これらはいずれも大きな、かつきわめて現実的な課題であり、現在も文民の保護をめぐる本部・政策レベルでの議論の基礎的な枠組みを成している。そこで本稿では、特に人道アクセスが文民の保護を達成する上での大きな障害の一つと認識されていることに着目し、次節でこの点を掘り下げてみることとしたい。Ⅱ人道アクセスの交渉・確保人道アクセスとは、人道アクターが被災者に必要な支援を届ける能力、及び被災者自身が必要な支援に手が届く能力のことを指す(21)。したがって、十分かつ妨げられない人道アクセスの確保は、効果的な人道支援を達成する上での前提条件である。なお、戦闘・戦術を優先にした結果としての部分的なアクセスの充足ということでは、人道性・公平性・中立性の人道原則もまた達成されない(22)。災害や国内暴動などの状況では国内当局が被(災)害者を保護する第一義的責任を負う。他方武力紛争の場合、全ての戦闘当事者が保護の責任を負うが、国家もしくは非国家戦闘当事者がこのような義務を果たせない、または果たす意思がない場合、国際支援の受け入れと実施を許容・促進する義務を負う(23)。30人道研究ジャーナルVol. 2, 2013