「人道研究ジャーナル」Vol.2

「人道研究ジャーナル」Vol.2 page 33/276

電子ブックを開く

このページは 「人道研究ジャーナル」Vol.2 の電子ブックに掲載されている33ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「電子ブックを開く」をクリックすると今すぐ対象ページへ移動します。

概要:
「人道研究ジャーナル」Vol.2

The Journal of Humanitarian Studies Vol. 2, 2013一方で、様々なタイプの制約は効率的な人道アクセスの妨げとなる。主なアクセスの制約要因としては以下があげられる(24)。?人道要員及び物資供給に関する官僚的な制約条件(例:ビザ発給、入国審査、検疫等)?気候・地形に伴う困難とインフラの欠如?支援の分断およびその実施への干渉?活発な戦闘行為と軍事オペレーション?特に政治的かつ経済的意図を伴った人道要員、物資、施設などへの攻撃なお、意図的な妨害行為は国際法の違反となる。他方、特に人道アクセス確保を目的とした戦闘当事者との同意に基づく一時的停戦などの実現・実施には大きな困難を伴う。人道アクセスの確保・促進に関するOCHAの役割としては、諸制約条件克服のための交渉と調整があげられる。特にUSG/ERCは国連総会決議46/182で人道アクセスのための交渉を指揮するようマンデートが与えられている(25)。例えば2004年スーダンにおいて、OCHAはニーズアセスメントと支援実施のため、北ダルフールの3分の2の地域をコントロールしていたスーダンの武装勢力SLM(Sudan Liberation Movement)との交渉を担った(26 )。OCHAは当初、SLM側が人道支援団体の中に政府側スパイが紛れているのではないかとの疑念を抱いたのに対し、国際規範に照らして人道援助の性質や原則とSLM側の協力義務を粘り強く説明した。そして、人道支援団体側が物資輸送警護自動車の移動計画と通行状況をOCHAを通じて随時報告する代わりに、SLMが支援要員を攻撃したり物資や車両を略奪しないことで書面合意するに至った。この結果、攻撃回数は劇的に減少し、50万人以上への人道アクセスが実現されている。また、人道アクセスに関するOCHAの他の役割として、アクセスの状況に関するモニタリング活動があげられる。こうしたモニタリングは、特にアクセスに関する制約条件を克服するための共通アプローチの形成及び交渉プロセスに大きく貢献している。またモニタリングで分析されたデータは国レベルでの文脈に沿った解決策作成に反映されるとともに、安全保障理事会へも報告され当該国に関する討議を含め、様々な政策的議論に反映されている。かかる努力にも関わらず、上記にもある通り人道支援要員・物資・施設に対する直接ないし間接的な攻撃が人道アクセス、そしてひいては文民の保護の実現に対する大きな脅威となっている。これを受け、次節ではいかにすれば人道要員を効果的に保護し、かつ人道支援活動を継続していくことができるのかという課題について検討することとしたい。Ⅲ.人道支援要員の保護武力紛争の当事者が国際人道法を遵守せず、人道支援要員が攻撃の標的になる事件が頻発している。下記の三つのグラフは過去10年、殺害、負傷もしくは誘拐など様々な被害にあった人道要員数の推移を示している。Humanitarian workers as victims ofsecurity incidents250NATIONAL STAFFINTERNATIONAL STAFF225200175150125100755025図Ⅰ(27)Security incidents by type1251007550250KidnappingLandmine/lmprovisedExplosive Device/BombingAmbushAssassinationsOther incidents図Ⅱ(28)2000 2010Humanitarian workers killed/kidnapped125 KILLED100755025KIDNAPPED図III (29)02000201001997 2000 2009Source:aidworkersecurity.orgOne incident could afect more than one personSource:aidworkersecurity.org人道研究ジャーナルVol. 2, 201331