「人道研究ジャーナル」Vol.2

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「人道研究ジャーナル」Vol.2

The Journal of Humanitarian Studies Vol. 2, 2013大規模災害に備えた日本赤十字社の災害救護活動及び連携上の課題髙梨成子1はじめに日本赤十字社(以下、日赤)は、明治時代に創設されて以降、赤十字の人道的任務として自主的に災害救護活動を実施してきており、災害対策基本法や武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律(国民保護法)に指定公共機関として規定されている。日赤では、災害救護活動を円滑に実施するため、法律に基づいて防災業務計画や国民保護業務計画を作成し、体制整備を進めてきている。日赤の災害救護活動としては、(1)医療救護、(2)救援物資の備蓄と配分、(3)災害時の血液製剤の供給、(4)義援金の受付と配分、(5)その他災害救護に必要な業務(応急手当、炊き出し、外国人の安否調査、避難所での世話等、こころのケアなど被災者のニーズに応じた活動)などが行われている(1)。近年は、防災に係わる団体や個人も、行政関係機関だけでなく、新しい公共と呼ばれる民間団体やボランティア等が輩出してきており、関係機関との連携が大きな課題となっている。ここでは、過去の災害時における日赤の活動状況を概観するとともに、東日本大震災の発生を受け、大規模・広域に及ぶ災害時における長期的・継続的支援実施のため、日赤の独自性を確保しつつ、関係機関等との連携をいかに進めるべきかなどについて考察する。1.災害の規模と発生頻度災害対策基本法によると、「災害」とは、「暴風、豪雨、豪雪、洪水、高潮、地震、津波、噴火、その他の異常な自然現象、大規模な火事/爆発」とされている。災害への対処の仕方は、災害事象や規模、災害特性等によってかなり異なる。表1に、地震災害の場合の発生パターンと事例を挙げた。このうち発生頻度が高いのは、下欄の中規模以下の災害であり、この数十年間で見ると、阪神・淡路大震災を除けば、比較的規模の小さい局所的災害が多かった。しかし、東日本大震災の発生により、最大規模の災害(レベル2)への対処が大きくクローズアップされるようになり、発生頻度は低いものの一旦発生すれば影響の大きさでは計り知れない、大規模広域・複合型災害(予想されている東海、東南海、南海地震連動型地震や首都直下地震等)への対処が重要視されている。一方で、気象環境の変化による豪雨災害等も多発しており、発生頻度が高い小規模災害への対処はもちろん怠ってはならない。歴史的に見て、防災・危機管理体制は強化と弱体化を繰り返してきたが、近年における変容も踏まえ、以下では、筆者が災害記録の作成に関与した、比較的小規模な災害であった平成19年に発生した能登半島地震(2 ) (3や新潟県中越沖地震) (4と、地震津波災害である北海道南西沖地震)や大規模地震津波災害である東日本大震災時の対応等を比較する中から、課題を抽出して行く。2.過去の災害時における日赤の活動状況過去の災害時における日赤の活動状況のうち、救援物資の配分と医療救護を中心に述べる。2-1医療救護班の派遣及び調整日赤は、災害救助法に基づき、都道府県からの委託業務の一環として、「医療、助産及び死体の処理(一時保存を除く)」を担うが、具体的には、「災害時に救護班を派遣し、一人でも多くの人命を救助するとともに、被災地の医療機関の機能が回復するまでの空白を埋める役割を果たす。また、避難所等への巡回診療を行うこ1(株)防災&情報研究所代表36人道研究ジャーナルVol. 2, 2013