「人道研究ジャーナル」Vol.2

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The Journal of Humanitarian Studies Vol. 2, 20132東日本大震災時の対応東日本大震災時には、日赤からは、毛布13万枚、緊急セット3万セット、安眠セット1万3,000セットなどを配付した他、岩手県では、避難所で使用するパーテーション347枚を配付、企業から寄付提供された食品、医療資機材や生活用品を、被災地の医療機関などに向けて輸送した。しかし、通常の地震避難に加え、沿岸部での広域に及ぶ津波避難が加わった。雪が舞う中、暖かい服装の準備もできないまま緊急避難し、家屋も全壊・流出した被災者が多数を占めており、浸水域に取り残されたり、避難中ないしは避難所で低体温症になったり凍死した人もいた。さらに、福島県等では、原発の爆発事故からの広域避難が始まっていた。日赤としては、通常備蓄の半数以上の毛布を供出していたが、通常の緊急物資の供給では全く不足していた。例えば、災害毎の毛布の配付状況について見ると、北海道南西沖地震や能登半島地震、新潟県中越沖地震のような小・中規模災害では、日赤から約2,000~3,000枚の毛布が配付されていたが、阪神・淡路大震災では83,525枚、新潟県中越地震では18,069枚が配付されていた。一方、東日本大震災時には、日赤から毛布13万枚が配付されたが、さらに、政府緊急災害対策本部(被災者生活支援特別本部)から約41万枚の毛布が配られており、救援規模と配付体制の違いがわかる。また、東日本大震災において、他地区や他市町村へ津波や原発事故で避難した住民等に対し、受入側となった地区住民等により、不足した毛布等が供出された所もあった。(2)緊急物資の搬送・配布体制1新潟県中越地震等における物資の受入れと教訓今日では流通機能が発達しており、緊急期を過ぎると被災地に過剰に物資が集中し、災害対策をむしろ阻害するというマイナス面があることが知られており、日赤では、従来より原則として義援物資は受付けていない。過去に自治体が受け入れた事例では、“善意の”義援品は被災地のニーズに合わなかったり古着などが多く、有用なものは約1~2割しかないなど、被災後に大量に送られる義援物資は、“第2、第3の災害”とも称されている。自治体では、人員不足の中で大量の物資の仕分け要員をさかなければならなかったり、北海道南西沖地震では、奥尻島に集中した義援物資の保管のための倉庫を新たに建設したなど、義援物資の受け入れに疑問が呈されていた。新潟県長岡市は、平成16年新潟県中越地震における経験を踏まえ、「物資調達・救援物資対応マニュアル」(平成20年4月22日)を作成し、次のような基本方針を示している。○応援協定を結ぶ自治体・団体・企業からの物資調達を基本とする○個人からの救援物資については「災害発生直後は、受け取らない」○無料「ゆうパック」の申請をしない平成19年に発生した能登半島地震や新潟県中越沖地震時には、これらの教訓を参考として、被災市町では地方自治体からの支援や企業・事業所への委託を基本とし、輪島市等では、大口寄付のみ受付けて登録し、必要な物資のみ要請した(2)。平成19年新潟県中越沖地震の際は、当初、備蓄物資等(食糧、水、トイレ等)を供出し、協定業者・自治体等へ依頼するとともに、日赤、自衛隊等により毛布等が配給され、急場をしのいだ。次の段階では、物資が市に過集中して配送ができなくなったことから被災後4日目に県が中心となって配送システムの再構築を図り、県が全体の配送システムを担当、県及び市村では物資提供事業所等を登録し、小口物資を断りながら、登録された物資の提供を依頼、不足物資を国等を通じて手配した。第3の段階では、専門業者へ委託し、ルーチン的な配送ときめ細かな対応を行っていった(3)。2東日本大震災における物資の調達・輸送東日本大震災においては、ライフラインや道路が途絶え、被害が広域に及び、被災地は著しい物資不足に陥った。被災地の市町村庁舎及び職員の被災により、機能低下していることに鑑み、政府緊急災害対策本部(被災者生活支援特別対策本部)において、物資の調達・輸送を実施することになった。通常は、災害救助法に基づき都道府県が実施する業務であり、側面支援はしても、政府が全面に出て対応した前例はなかった。3月11日に、官邸危機管理センターに担当班を設置し、3月14日に平成22年度予備費から約302億円を物資支援に使用することを閣議決定、食料等の配送を始めた。3月19日には、県内の物資集積拠点が飽和状態人道研究ジャーナルVol. 2, 201341