「人道研究ジャーナル」Vol.2

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「人道研究ジャーナル」Vol.2

The Journal of Humanitarian Studies Vol. 2, 2013になり、末端までの輸送が滞るなどの問題が生じたものの、3月23日に県・市の災害対策本部に物流専門家を派遣し、物資の滞りの解消に努め、4月21日に県に体制を移行した。この間、280社・団体から無償提供された物資についても輸送された(8)。このような被災地からの支援要請がなくとも国や他の自治体等が物資を送り込む“プッシュ型支援”においては、地元ニーズとの不適合や、地元の配送体制が整わないため一部に過集中し、末端まで物資が行き届かないという問題が生じていたことは否めないが、それらの解消も努められた。また、東日本大震災では、初めて関西の2府5県で構成される関西広域連合による支援が始動した。災害協定等に基づく自治体間での被災地への対口支援(中国の四川大地震で実施された支援方法。支援相手と応援側地方自治体を決めるカウンターパート方式による支援)方式は、被災地のニーズを汲んだ支援方式として注目された。このように、災害の規模が大きく広域に及んだ場合、緊急物資の調達・輸送体制を拡大して実施する必要があったことから、平成24年5月に改定された災害対策基本法において、「救援物資等を被災地に確実に供給する仕組み」が創設され、被災市町村からの要請が無くとも、国や都道府県が物資支援を行うことができるようになった。2-3救援活動の長期継続的実施としての“こころのケア”東日本大震災においては、災害が長期に及び、支援活動も2年後の現在でも継続されている。日赤が行っている支援活動のうち長期に及ぶ活動として、阪神・淡路大震災の頃から重点を置いて実施してきた“こころのケア”活動が挙げられる。これは、精神医療ケアというより、災害に遭遇した被災者の日常における身体的・心理的予防措置に重点が置かれており、医療救護班を編成する際にも可能な限り、看護師を主体とするこころのケア要員を加えることとされている。ベトナム戦争からの帰還者に対する米国の調査研究を契機として始まった被災者の臨床心理的研究によると、心的ケアを必要とする被災者の割合は災害により異なるが、長期に及ぶことが知られている。また、日本においては、被災者同士の助け合い、すなわち被災者の物的心理的ケアを地域コミュニティが担ってきた側面があったと言えるが、阪神・淡路大震災では、応急仮設住宅や災害復興住宅の入居時に、コミュニティ単位を維持することができなかった。また、都市部や高齢化が進んでいる地区等においては災害前から地域コミュニティが崩壊していたり、福島原発事故では、全国に避難者が散在し、コミュニティ単位での心的ケアが困難となった。東日本大震災時においては、平成23年9月末まで派遣された医療救護班に帯同したこころのケア要員や、こころのケア要員のみで編成されるチーム、地域の巡回などを行う要員が718名派遣され、1万4,000人以上を対象に活動した。日赤岩手県支部は平成23年9月10日から、毎週土曜日、県の臨床心理士会と協力して、宮古市中里地区の応急仮設住宅の集会所で、コミュニティ再生事業として「皆さんが元気になる活動」を展開しているなど、赤十字奉仕団員の協力を得ながら、継続的な活動を展開している。このように、地域において長期にわたり活動を継続して展開するうえでは、地元の関連団体や赤十字奉仕団、防災ボランティア等との連携が活動の鍵を握ると言える。2-4日赤の災害時活動の認知度及び評価それでは、日赤が災害時に行った救護活動は、被災者にどのように受け止められているのだろうか。東日本大震災時の調査はまだ十分に把握していないので、日赤が平成19年能登半島地震で行った個別の救護活動についての被災者の認知・受援・評価について見ると、以下のとおりであった(2)。(1)被災者による日赤の個別活動評価能登半島地震では、救護班派遣が長期にわたったこともあり、医療救護活動が最も多く68%の人に知られていた。実際に医療を受けた人が29%おり、活動の評価も51%と最も高い。また、地震の当日夕方に、最初に毛布を配給したことも良く知られ、実際に毛布を使っており、評価も高かった。地震当日に避難所に避難した人の割合が64%ときわめて高かったことから、時宜を得た効果的な支援だったと言える。物資の提供に関しては、地震当日の夕方、最初に日赤がネーム入りの毛布を配給したことから、53%の人が「(日赤による)42人道研究ジャーナルVol. 2, 2013