「人道研究ジャーナル」Vol.2

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The Journal of Humanitarian Studies Vol. 2, 2013特別寄稿レジリエンス:最近の流行か、あるいは新たな解決策か?ウォルター・コッテ1なぜレジリエンスかレジリエンス(resilience)は、人道支援や開発分野において、政治家のみならず企業においても、この数年間でその使用が増加している言葉である。共通の定義はなく、また翻訳される言語によってその意味はわずかに異なるものの、レジリエンスとは開発の究極的状態であり、恐らくは人間の進化にとって最も重要な側面であるということが共通の理解となっている。すなわち、人々の生活にとって回避不可能な衝撃に抵抗し、うまく乗り越える状態を意味する。創設後150年以上もの間、赤十字及び赤新月社の組織は休むことなく人間の脆弱性に対応することで、人間のレジリエンスを強化してきた。その規模と範囲は、太平洋諸島の赤十字社による小規模のコミュニティ災害対応活動から、日本赤十字社の92病院を通じた世界レベルでの医療サービスと多岐にわたる。事実全世界に188ある各国赤十字・赤新月社は、その国内の文脈において日常業務を実施し、個人とコミュニティのレジリエンスの構築に寄与している。1980年代において、世界の人道支援の最重要課題に「予防は治療にまさる」という考え方をもたらしたのは赤十字・赤新月社である。そこで、活動を行う我々の同僚にとっては、「レジリエンスという考え方がもたらす価値とは何か。我々がこれまでに長期にわたり構築し実践してきたものではないのか?」という問いが生まれる。本稿では、プログラムの観点からは新しいアプローチではないが、様々な分野における我々の活動がレジリエンスの概念の導入により上手く連結することが可能となることについて述べる。さらに、この統合的なアプローチは、レジリエンスの構成要素を上手く捉えることを可能とし、国ごとの違いのみならず、国内の社会集団間において常に異なる特定の文脈において特別の注意を必要とする。レジリエンスとは何かレジリエンスのセクター・ワイドな考え方は物質科学および生態学に由来するが、さまざまな社会規範や心理学にも適応されており、変化する状況に効果的に対応し適応するシステムの能力に関係していることが多い。具体的には、それは衝撃を吸収する極めて重要な物理的インフラの能力である。さらに心理的な観点では、困難な状況を乗り越えるための適応プロセスと技術、潜在能力、振る舞い及び行動の一連である。すなわち、レジリエンスとは、自らの運命に従い、権利や義務を積極的な形態で理解するための能力である。定義の各側面に関する詳細について、以下に記述する。?能力(ability)はレジリエンスを理解するための重要な言葉である。能力とは、異なる人的、精神的、1国際赤十字・赤新月社連盟事務次長(事業局担当)。40年間にわたり、コロンビア赤十字社のボランティア活動や同社の災害救護部長等の要職を経て、同社の事務総長を務めた。30カ国の災害リスク軽減プロジェクトに関わった。連盟のアジア・太平洋地域のオペレーションの坦当。国連災害評価調整チーム(UNDAC)の創設メンバーの一人であり、国連の国際捜索救助諮問グループの創設メンバーであり、コンサルタントとして活躍した。また、連盟の災害・危機諮問委員会の副議長を務めた。2013年1月から現職。人道研究ジャーナルVol. 2, 20137