「人道研究ジャーナル」Vol.2

「人道研究ジャーナル」Vol.2 page 98/276

電子ブックを開く

このページは 「人道研究ジャーナル」Vol.2 の電子ブックに掲載されている98ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「電子ブックを開く」をクリックすると今すぐ対象ページへ移動します。

概要:
「人道研究ジャーナル」Vol.2

The Journal of Humanitarian Studies Vol. 2, 2013政府の人道分野における補助機関としての赤十字社と日本赤十字社National Red Cross Societies as Auxiliaries to the Public Authorities in the Humanitarian Field andthe Japanese Red Cross Society1河合利修はじめに各国赤十字・赤新月社(以下引用など特別な場合を除き、赤十字社)の政府の人道分野における補助機関としての役割は、新設赤十字社の承認条件の一つであり、また、国際赤十字・赤新月運動(以下引用など特別な場合を除き、赤十字)の基本原則の一つである独立の原則にも組み込まれている。歴史的にみると、第二次世界大戦終了まで、赤十字社、そのなかでも特に欧米および日本の赤十字社は、戦争における軍隊の衛生部隊を補助する活動を主な任務としていた。しかし戦後は、軍隊の衛生部隊の補助としての赤十字社の活動はほぼ皆無となり、かわって、政府の衛生事業の補助機関としての役割が大きくなった。また、補助機関としての赤十字社の役割そのものが現在問われており、赤十字の諸会議における議題ともなっている。本研究においては、国際法および国内法における赤十字社の補助機関としての位置づけについて、法的な観点から考察する。そして、我が国において日本赤十字社がどのように政府の人道分野における補助機関として位置づけられているのかを検討する。なお、本研究は平成23年度「赤十字と看護・介護に関する研究」助成金に基づく研究の報告書である。I.先行研究この分野についての先行研究は皆無というわけではないが、少ないのが実情である。アラン・ローザスはこの問題を正面から扱ったが、「赤十字運動における各国赤十字社が果たす役割の重要性をここで説明する必要はない。しかし、特に法的な観点から各国赤十字社について書かれたものはほとんどない」(筆者訳)とその論文の冒頭で述べている(1)。このような状況のなかで、政府の補助機関としての赤十字社については、赤十字の諸会議のなかで研究を推進するよう決議され、様々な報告書が提出された。そのなかでも、1999年にジュネーブで開催された第27回赤十字・赤新月国際会議(以下、赤十字国際会議)(2)は「二〇〇〇年~二〇〇三年の行動計画」を決議、そのなかの最終目標3.3、行動15は国際赤十字・赤新月社連盟(以下、IFRC)が以下を行うと定めた。各国赤十字・赤新月社およびICRCと協力して、政府と各国赤十字・赤新月社との関係についての綿密な研究を開始する。その際、人道的、衛生的、社会的な面において変化するニーズ、各国赤十字・赤新月社の補助機関としての役割、そしてサービス提供における政府、私企業、ボランティア機関の変化する役割を考慮に入れる(3)。さらに2001年の赤十字・赤新月代表者会議(以下、代表者会議)(4)は「国際赤十字・赤新月運動のための戦略(Strategy for the International Red Cross and Red Crescent Movement)」を定めたが、ここでも政府の補助機関としての赤十字社についての研究に関し、以下のとおり行動14で言及している。政府と各国赤十字社の関係の特徴は独特であり、両者に多くの利益をもたらす。政府の補助機関としての各国赤十字社の役割は、国際人道法(例:1949年のジュネーブ第一条約第26条)および国際赤十字・赤新月運動の規約(例:第3条(1)および4条(3))に基づいている。補助の役割により、各国赤十字社は特別な地位、つまり私的な団体でありながら同時に公的な機関であるという地位を持つ。独立の原則は、各国赤十字社が常に基本原則にしたがって行動できるようにするため、十分な自主性をいつも保たなければならないと定めている。さらに、1日本赤十字豊田看護大学准教授96人道研究ジャーナルVol. 2, 2013