ブックタイトル人道ジャーナル第3号

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概要

人道ジャーナル第3号

The Journal of Humanitarian Studies Vol. 3, 2014日本赤十字看護大学と日本赤十字社事業局看護部共同による東京電力福島第一原発事故被災者への健康支援事業の活動報告─日本赤十字社による被災者のための中長期健康支援事業支援に関する一考察─日本赤十字看護大学内木美恵はじめに東京電力福島第一原子力発電所(以後、福島第一原発とする)事故被災者を支援する目的で、日本赤十字看護大学(以後、日赤看護大学とする)は浪江町と協定書を交わし、日本赤十字社事業局看護部(以後、本社看護部とする)と共同で、いわき市に避難した浪江町民に対する健康支援事業を平成24年10月より開始した。日本赤十字社による災害後中長期の支援は建築などを基本とするハード面での支援であり、医療者の派遣等による保健事業などのソフト面の支援はこれまでにあまり例がない。また、日赤看護大学と本社看護部が共同で中長期の国内災害支援事業を行うことも殆どない。今回、この事業の経緯と活動概要を報告し、国内における日本赤十字の支援の在り方に関して検討した。1.本事業に至る経緯と活動概要1)いわき市に避難生活中の浪江町町民支援の経緯と行政の対応?県内避難と住居について福島第一原発事故(以後、原発事故とする)被災者の避難は、事故発生直後から避難指示区域に指定された福島第一原発から半径20km以内在住者対象であった。その後、避難地域の見直しが行われ、平成24年4月からは年間の放射線量を基準とし新たな区分けが行われた。被災者は浜通り地区在住者であり、中でも双葉郡の町村が避難の対象となっている。福島県の避難者数は148,729人で、県内95,452人(64%)、県外53,277人(36%)である1)。発災から半年後には、避難所から仮設住宅や既存のアパートなどの借り上げ住宅に移り、仮の住宅で生活している。県内で被災者が避難している市町村は、福島市、郡山市、二本松市、会津若松市、いわき市、相馬市等である。?いわき市の避難住民への保健サービスの提供県内の避難住民への保健サービス提供は、管轄する県の保健所が対応にあたった。県保健所だけでは人材が不十分なため、厚生労働省、総務省が看護師、保健師の派遣をし、日本看護協会は福島県内への看護職の就職を勧め、福島県への支援を行った。いわき市の人口は127,643人である2)。津波による死者430人、仮設住宅または借り上げ住宅居住者は7,882人であり、津波による大きな被害を受けていた3)。いわき市は、双葉郡の町村からの原発事故被災による避難住民を受け入れており、24,013人である4)。居住者に対する平常時の保健サービスの提供は、市町村が行うところであるが、この原発事故による被災者は福島県内外を問わず避難した。被災者が集中して居住する町村と、異なる地域の様々な町に分散して避難した町村があり、避難者の住民票がある町村の保健師だけでは、手におえない状況であった。いわき市は、福島県における中核市であったため、双葉郡を管轄する県A保健所が保健師を派遣し対応したが、1災害時に出張して主体的に保健サービスを提供することが初めてであったこと、2県保健所の通常業務が町村保健師のように直接保健サービス提供ではないこと、3他の県保健所が対応する人数より多くの避難住民を対象としなくてはならなかったこと等から、避難住民への保健サービス提供が進まない状況にあった5)。?日本赤十字社によるいわき市に避難した原発事故被災者の健康調査いわき市に避難した原発被災者への保健サービスが停滞している状況に対し、厚生労働省は、打開をめざし、民間組織による支援を模索した結果、日本赤十字社に支援依頼の申し入れが行われた。依頼を受けた本社看護部は、日本赤十字社が国際救援や国際的開発協力事業において、災害後の混沌とした状況や紛争で国を追われて難民キャンプで生活する被災民に対し、政府機関とともに保健サービスの提供を調整してきた経102人道研究ジャーナルVol. 3, 2014