ブックタイトル人道ジャーナル第3号

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概要

人道ジャーナル第3号

The Journal of Humanitarian Studies Vol. 3, 2014陸前高田市支援プロジェクト~介護サポートボランティア養成講座の開始に至るまで~日本赤十字広島看護大学山本加奈子,村田美和,村田由香,眞崎直子1.これまでの経緯と活動の内容東日本大震災被災地では平成23年3月11日発生以降、日本赤十字社(以後、日赤とする)をはじめ多くの医療救護、生活支援活動がなされてきた。災害急性期・亜急性期を脱し、多くの団体が撤退する中、陸前高田市における日赤本社の看護ケア班の活動を引き継ぐ形で、日赤6大学による看護ケアプロジェクトが開始された。これは、平成23年10月~平成24年3月にかけて、各大学が1ヵ月毎の持ち回りで、それぞれ得意とする分野の支援を独自に計画するものであった。多くの住民が仮設住宅に移住する中、主に「集いの場」を提供することを前提に、仮設住宅において活動を行ってきた。10月は本学が担当し、『食べられる口づくり、元気づくり!』と『リラクセーションと運動でこころとからだの元気づくり!』というテーマで、計2回の参加型の健康教室を開催した。住民には喜ばれた企画であったが、仮設住宅におけるイベント的開催になり、当然の事ながら、継続性の面で課題が残った。平成24年度、日赤6大学のプロジェクトは、それぞれの大学単位での支援活動にシフトした。この頃、陸前高田市では公衆衛生の視点からポピュレーションアプローチによる健康増進・介護予防への取り組みが展開され、発災当初から懸念されていた被災者の心のケアについては、社会福祉協議会を中心に「お茶っこサロン」などが定着していた。しかしながら、お茶っこサロンなどの活動は、仮設住宅住民のために行われているものという風潮があり、仮設住民と非仮設住民(自宅避難者・個人宅避難者)の間に隔たりができ、実際、非仮設住民の参加の難しさがあった。また、震災の影響により、軽介護者を含むデイケアやショートステイの利用者、ならびに要支援・要介護認定者が増加傾向にあり、福祉サービスの需要が増加していた。それに対し、同市や地域の医療・社会福祉法人はサービスの拡大を急いでいるが、医療・福祉を支える人材の不足により、供給の拡大が限定的であるために、サービスを受けられない方も多くいる現状であった。さらに、陸前高田市の高齢化率は平成18年度から30%を超え、震災前から少子高齢化が進んでいる地域でもあり、在宅での介護を支える仕組みづくりは急務であった。そこで、平成24年度は、同市における在宅介護家族支援事業として、1介護家族が集える場づくり、2介護家族同士のつながりづくり、3介護家族に介護のチエ・コツを教授することを目的として、「介護家族のつどい」を開催した。これは、震災前から必要性があった“介護家族の会”の基礎となること、また、仮設・非仮設住宅を別け隔てなく住民が集うことで、これからの新しいコミュニティー作りの一助になることを期待し、陸前高田市内の2地区においてモデル的に取り組んだ。まず、住民のニーズアセスメントにより、被害妄想・易怒性等の認知症が現れている方との関わり方、肩こり、腰痛、筋力低下、尿漏れ等の身体症状に効果のある体操、介護ストレスへの対処法の習得についてケアニーズが把握された。そこで、これらの内容について、10月、11月に計2回の健康教室を実施した。参加者らは、教室で得た学びをできる範囲で活用し、より健康的に介護・介護予防が続けられるよう、それぞれ努力されている様子が伺えた。本活動における課題は、地区ベースで行ったことにより、参加者が限定されてしまったこと、非仮設住民の参加が難しい状況になってしまったこと、さらには、介護家族という、いわゆるハイリスク集団だけへのアプローチでは、根本的な介護家族支援につながらないということであった。平成25年度には、地域の介護要員が不足しているだけでなく、介護福祉施設での人材も不足している状況は改善されない中、ポピュレーションに幅を広げ、地域全体で介護家族をサポートしていく仕組みづくりに取り組んだ。これは、陸前高田市包括支援センターの年間目標として挙げられた、1地域ケア会議の充実(ケアマネージャーの質向上、地域問題の解決)、2認知症啓蒙普及、3高齢者権利擁護、4高齢者が高齢者を支える地域づくり、の4の一環で「介護サポートボ106人道研究ジャーナルVol. 3, 2014